「無駄に働く」という最悪のサバイバル戦略
そして、この「後ろめたさ」から逃れるために、彼らが繰り出すのが「無駄に働く」という最悪のサバイバル戦略である。
・自分の存在価値を証明するためだけに、不要な会議を毎週招集し、部下の時間を奪う。
・決裁権を誇示するために、部下の仕事に細部まで口を出し、重箱の隅をつつく。
・複雑な社内ルールや承認フローを新たに作り出し、自分が「関与」しなければならない領域を肥大化させる。
「働かないオジサン」は、最悪「貢献度ゼロ」ですむが、「無駄に働くオジサン」は、組織のスピードを削ぎ、不要な業務を再生産し、部下のやる気を枯渇させるため、その貢献度は明らかにマイナスだ。
彼らが「裏の承認」を得るために必死に演じている「忙しそうな上司」という芝居が、日本企業の生産性を引き下げる原因になっていることを見落としてはいけない。
「ハンコの押し直し」に固執する往年のエース
かつてバリバリと働いていたはずの先輩が、なぜ定年間近になって「ハンコの押し直し」や「どうでもいい形式」に固執し始めるのか。
あるいは会社のことはそっちのけで自分の仕事に邁進してきた人が、なぜ急に愛社精神をアピールし、できもしない改革案をぶち上げて後輩に「宿題」を残すのか。
それは、「自分はもうこの組織に必要ない」と突きつけられる恐怖と戦っているからではないだろうか。
ここまで見てきたように、日本特有の「裏の承認」が、私たちの労働時間、休暇の取り方、オフィスの形態、果ては部下のモチベーションや不祥事のメカニズムに至るまで、水面下で強い支配力を及ぼしている。
マネジメント層がこの「承認」という通貨を軽視し、金銭や罰則といった表面的なレバーだけに頼り続ける限り、日本企業の「働き方改革」が真の成果をもたらすことはないだろう。組織が有能な若手の角を折り、牙を抜く装置として機能してしまうのは、まさにこの「誤ったマネジメント」が、承認という人間の根源的な欲求を、歪んだ方向へと誘導してしまっているからにほかならない。


