物価高騰と生活保護

病気の知らせを聞き、心配で連絡をくれた友人たちにも、生活保護のことを隠さずに報告すると、一様に「元気に働いていた時に払ってきた税金。生活保護は国民が受けることのできる権利だから恥じる事はない。堂々と受けて、また働けるようになればいい」と言ってくれた。

「しかし(生活保護受給してからの)生活は楽なものではありません。2カ月に一度の家庭訪問があり、毎月の収入報告は欠かせません。最低限の暮らしができる金額が、世帯構成で決められ、その中から収入などを差し引いた分が保護費として支給されます。労働で得た収入はいくらか規定の額が控除されます。なので働いた分はちゃんと手元に残る金額があるようにできています。その控除部分などを貯めて生活の再建に使うわけですが、その貯蓄も上限があり、ちゃんと申告しなければなりません。しかしこの物価高騰の折、控除額を貯める生活など、できたものではないのが現実ではあります……」

息子の児童手当も収入として扱われ、年に一度は通帳のチェックもある。熊部さんには病気による「就労不能」が認められているが、妻には「就労指導」がある。少しでも家計を助けたい熊部さんは、薬で痛みを誤魔化しながらできる範囲でアルバイトをし、きちんと申告している。

2冊の通帳
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「ひと様の大事な税金から助けてもらっているのだから、当たり前ではありますが、社会の厳しいルールの中で正しく受給しています。だからこそ、僕は不思議でならないのです。世の中に蔓延する『不正受給』のニュース。これだけ細かく調べられ、すべてを管理されている中で、一体どうやって不正なんてできるのか。ルールを破る一部の不誠実な人たちのせいで、どうしても受給せざるを得ない人間が、まるで悪人のような目で見られる。真面目に報告し、正しく受給している人間にとって、それは本当に迷惑で悲しいことです」

熊部さんは、幼少期に何でも押し付けてきた母親の影響のせいか、トランス男性ゆえに「男性・夫・父親はこうあるべき」という考え方に縛られているのか、1人で背負い込みすぎるきらいがあった。だが、心から熊部さんを心配し、寄り添ってくれる妻や友人たちの存在が、母親から受けた呪縛を少しずつ解いていった。

息子が自閉症と軽い知的障害の診断

現在、息子は発達外来で自閉症スペクトラムと軽い知的障害の診断を受け、支援学級に進級し、親子三人で自立に向けて頑張っている。

「今も僕は右半身の痛みと付き合っています。でも、心療内科の先生が主治医となり、心と体の両面からケアを始めたことで、少しずつ気持ちに余裕が生まれました。不登校になった息子に僕が勉強を教えることで、学校を休むことへの罪悪感も少しずつ小さくなりました。

息子のつらさや頑張りを丸ごと全部受け止めようとしていましたが、『父ちゃんだってつらい日もあるのさ。用事がある日もあるのさ』とこちらの事情も伝えるようにしています。(血のつながりはないが)『父ちゃんと学校行きたい』と言われると、『愛されちゃってるわー!』とうれしくなります」