目的は「漢字指導の効率化」だった
それでは、どのような理由で文部省は『手びき』を作成したのでしょうか。『手びき』の「本書のねらい」を見ると、次のように記されています。やや長くなりますが、重要な箇所なので引用します。
“漢字の筆順の現状についてみると,書家の間に行われているものについても,通俗的に一般社会に行われているものについても,同一文字に2種あるいは3種の筆順が行われている。特に楷書体の筆順について問題が多い。
このような現状から見て,学校教育における漢字指導の能率を高め,児童生徒が混乱なく漢字を習得するのに便ならしめるために,教育漢字についての筆順を,できるだけ統一する目的を以て本書を作成した。本書においてはとりあえず楷書体の筆順のみを掲げたが,楷書体の筆順がわかれば,行書体についても,おのずとそれが応用され得ると思われる。
もちろん,本書に示される筆順は,学習指導上に混乱を来たさないようにとの配慮から定められたものであって,そのことは,ここに取りあげなかった筆順についても,これを誤りとするものでもなく,また否定しようとするものでもない。”
(『筆順指導の手びき』「本書のねらい」より引用)
つまり、学校教育における漢字指導の能率を高め、児童が混乱せずに漢字を習得できるようにするため、教育漢字の筆順をできるかぎり統一しようとした。それこそが『手びき』作成の目的であったことがわかります。
実際『手びき』の「前書き」からは、当時は同一の学校・同一学年であっても異なる筆順が教えられていたという状況にあったこともうかがえます。
教育漢字の筆順を定めた方法
こうして、1958年に教育漢字(制定当時は「当用漢字別表」881字、現行では1026字)については筆順が定められましたが、それはどういった手順で定められたのでしょうか。この点について、先にも挙げた「前書き」には「学識経験者,大学教授,指導主事,現職の学校長,教師の方々十数名に御協力を願って」原案を作り、それを文部省内で調整して作られたと書かれています。

