ロシアを潤さない中国人観光客
中国からの訪問者のコスト感覚は、ロシア側と隔たりがあるようだ。
メデューザによると、フォーブス・ロシアの取材に応じたある女性は、中国からの公式代表団を受け入れた際でさえ、モスクワのレストランのコースランチ2500ルーブル(約5200円)を「妥当だと納得させるのに苦労した」と語っている。
低い予算感覚に合わせるべく、コストを徹底して切り詰めようと、対策はツアー実施のはるか前から始まる。中国のツアー会社は、シーズン前にロシアのホテルの客室をまとめて押さえる。
データは相応に古いが、米国際問題シンクタンクのカーネギー国際平和財団が2018年に公開した記事によると、ウラジオストクの3つ星ホテルで1人あたりわずか1000ルーブル(当時のレートで約1900円)。通常料金の5分の1から6分の1に買い叩かれている。
こうして、ぎりぎりまでツアー代金を切り下げて集客。ツアー客たちは代わりに、中国人添乗員に連れられて向かう先の中国系の土産物店で、高額の商品を買わされる寸法だ。
現地で落としたカネはロシアの事業者にほとんど渡らず、大部分が中国側の業者に吸い上げられていく。中国人観光客がいくら増えても、地元に還元されるカネはごくわずかだ。
通行許可前の氷上道路で起きた惨事
ロシアでは金銭トラブルに加え、中国人観光客の死亡事故も起きている。
冬のバイカル湖は、青みを帯びた透明な氷に閉ざされる。前述のチャンさんも向かった地だ。世界最深の湖を覆うこの氷はシベリア観光の見どころだが、危険も潜んでいる。
今年1月28日、オリホン島周辺で中国人観光客を乗せたオフロード車両が氷上で横転した。中国共産党機関紙『環球時報』英字版のグローバル・タイムズが在イルクーツク中国総領事館の話として伝えたところでは、江蘇省からツアーに参加していた75歳の女性が死亡し、4人が軽傷を負った。
中国国営英字新聞のチャイナ・デイリーによれば、車両は正式にはまだ通行が許可されていない氷上道路を走っていたという。
同総領事館は渡航者に対し、凍結した湖上では重量がある車両の走行を避け、代わりにホバークラフトを利用するよう呼びかけた。運転手は後日、氷上走行の安全規則に違反し死亡事故を起こした疑いで逮捕されたと、モスクワ・タイムズが報じている。

