「つまらない街になった」という人もいるが…
――久田さん自身はいまの歌舞伎町をどう感じているのでしょうか。
街の空気を形づくるのは、その街に暮らし、働く人です。人が変われば、街が変わります。とくに入れ替わり激しい歌舞伎町はなおさらです。
ぼくにとって歌舞伎町は海に似ています。泳ぎは得意なのですが、海が怖いんですよ。泳いでいるとき、下にサメがいておそわれるんじゃないかとドキドキしてしまって(苦笑)。
歌舞伎町には、海と同じ感覚があります。ふつうに働く人や学生もたくさんいますが、立ちんぼ、トー横キッズ、ホスト、ヤクザもいる雑多な街です。あの街には、どんな人がいて、何が起きるかわからない。そんなドキドキ感が歌舞伎町の魅力です。しかも人の入れ替わりが激しいので、いつも新たな刺激がある。
1998年頃にムック『実録不夜城』をつくった際、歌舞伎町を取材しているときに全共闘世代の人が「最近の歌舞伎町はつまらなくなった」と話していました。それから30年近く経ったいまも、「歌舞伎町が面白くなくなった」と語る人がいます。そんな言葉を耳にすると思うんです。それは野暮だな、と。
トー横キッズがなぜ歌舞伎町に溜まるのか。なぜ、ホストや立ちんぼが歌舞伎町にたくさんいるのか。それは、歌舞伎町が面白いからです。
歌舞伎町には、人を引き寄せる強い磁場があります。磁場に引き寄せられた人たちが街を形づくっていく。だからこそ、街は生き物のように変わっていきます。街の変化についていけずに、新たな歌舞伎町に面白さを感じなくなってしまう人もいるのかもしれません。でも、その変化こそが、ぼくにとって歌舞伎町の面白さなのです。
それと、この街の裏の主人公であるヤクザの視点がなければこの街の真実はわかりませんが、彼らの声は暴排条例後、みなさんの元に届くことはなかなかなくなってしまいました。『教養としての新宿・歌舞伎町』では、10時間くらいかけて彼らにインタビューしました。こういった声なき声を届けるのも僕らの役割だと思いますし、歌舞伎町の現在地が彼らの証言によってわかると思います。



