コロナ禍で若者が歌舞伎町に流れ込んだ

簡単に説明すると、売り掛けとはツケ払いです。ホストはツケが貯まって払えなくなった女性を風俗店やAV業者に紹介する。紹介したホストはスカウトバック(報酬)を得つつ、彼女たちが身体を売って稼いだ金を店で使わせてツケを回収する……。

悪質ホスト問題として、売り掛けは国会でも取り上げられました。社会問題化した結果、悪質ホスト=歌舞伎町というイメージが定着したのではないかと思います。

業界団体「一般社団法人日本ホストクラブ健全化推進協議会」の理事長で元ホストの北条雄一さんは「景気が悪いうえに、コロナで皆、職がなくなって不安になって売春に走ったというのが、ホストが問題化した遠因でしょう」と指摘していました。

コロナ禍で仕事を失ったり、内定を取り消されたりした若い男性が歌舞伎町に流れてきました。一方で風俗で働いていた女性は客が減り、パパ活をしたり、立ちんぼになったりした。売春によって溜まったストレスのはけ口として、ホストクラブに通うという不幸な連鎖が生まれたわけです。

当然、売り掛けシステムの是正や、買う側の取り締まりも必要です。同時に、ぼくはこの不幸な連鎖を生んだのは、政府の経済政策の失敗だと考えています。

伝統的な不良とトー横キッズの決定的違い

――この5年ほどで、トー横キッズがホストや立ちんぼと並ぶ“歌舞伎町の名物”になりました。これもやはり経済の低迷と関連しているのでしょうか。

北条さんは、コロナ禍で、家にいるようになった父親と母親がケンカばかりして居場所を失った若者がトー横に溜まるようになったと話していました。もちろんそうした面はあるでしょう。

不良少年を語る上でポイントとなるのが、「溜まる」というキーワードです。

たとえば、1990年代の横浜には横浜CIALという駅ビルの下に「シャル下」と呼ばれる若者が溜まっていました。同時期に、渋谷センター街に溜まっていたのが「チーマー」です。彼らのような不良少年は地元を大切にするという行動様式を持ち、地元に溜まります。

撮影=プレジデントオンライン編集部
TOHOシネマズ新宿横の植え込みがトー横キッズ発祥の地と目されている

雑誌「実話ナックルズ」の編集者だった頃、ぼくは暴走族や不良少年のチームを取材してきました。取材で重視したのが、初代のリーダーが誰かを突き止めること。写真などで確認し、複数人の証言を取り、真実に相当するという根拠を得てから記事化していました。

地元に根を張る暴走族やギャングなどは数十年経ってもOB同士の結びつきが強い。その分、証言を取ることができますし、歴史が明確になっているケースが多かった。

対して、トー横キッズは、いつの間にか存在していた集団、あるいは自然に発生した現象といえます。新宿東宝ビルの周辺を歩き、「トー横」発祥の地について複数人から聞いて突き止めましたが、本当にそこが「発祥の地」かどうか、確証は得られませんでした。

でもそもそも、この場所で溜まっていた若者は昭和の時代からいたので今さら「トー横」と騒ぐ必要もないのですけれどね。「トー横」という名称がついただけで、「行き場のなくなった人たちの集まり」であることに変わりありません。