楽屋アポなし訪問を謝罪していない

悪意がないからこそ、自らの「熱意」や「正論」を免罪符にして相手を痛めつけてしまう。佐藤二朗氏本人はこの重大な「仕事場におけるルール違反」を、いまだ公の場で謝罪するどころか、被害者アピールをつづけ、さらには、自分には(役者仲間やフジテレビのスタッフ、映画監督など)たくさんの味方がいる(=つまり、相手の橋本愛氏は孤立しているぞ、という匂わせ)という投稿も続けている。

佐藤二朗X、7月8日の投稿『最後の投稿と言っておきながら、ホント我ながら格好悪く、不様ですが、ご批判覚悟で。
いま本広監督から嗚咽止まらぬメールが来た。なんとこの期に及んで「まだスピンオフを諦めてない」と。なんて往生際が悪い人なんだ。
映画「踊るNEW」、9/18公開。マジで最高のエンタメです。皆さま是非。』

その前に「相手の俳優さんへの攻撃的な書き込みはやめてください」の一言が、なぜいえないのだろうか。

アウティングに加担したことに

佐藤二朗氏にとってみれば、彼の行動の原理は「仕事論」や「情熱」であり、「正義」でもある。それをよいことに、彼と彼の事務所は、橋本愛氏の過去のトラウマというきわめてセンシティブな情報を、他の俳優仲間にも伝えたり、最終的には、SNSで堂々と投稿した。全国に向けたアウティング(プライベートな情報の暴露)である。

なお、『週刊新潮』の佐藤二朗氏インタビューでは、フジテレビのコンプライアンス担当だという女性弁護士の所属事務所と氏名が掲載されたために、その結果として、今度はネットで彼女へのバッシングが起こっている。

悪意の有無ではなく、境界線で判断を

ハラスメントの定義とは「悪意の有無」ではない。「相手や組織が引いている境界線(バウンダリー)を尊重できているか」という客観的なファクトが問われるべきなのだ。

しかし今回は、合計3億ビューを超えた佐藤二朗氏の投稿の中の、役者論や芝居への情熱といった職人気質、被害者性のアピール、「弱い女性におじさんが逆に傷つけられた」というストーリーが、SNSで「祭り」のように支持されてしまった。だが、『週刊新潮』の佐藤二朗氏の独白インタビューを冷静に読めば、それはまさにフジテレビの報告書の内容を裏づける材料となっている。

今回の件はただのゴシップとして消費されるのではなく、今後、こういった「よかれと思って」「悪気はなくて」「あなたのために」といった新たな「善意の加害」を生まないためにも、そしてSNSでの「犬笛」に踊らされないためにも、問題点がどこにあったのか、しっかりと認識されるべきだろう。

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