光GENJIから深夜に電話がかかってきた日

私は20代の頃、旧ジャニーズ事務所担当、いわゆる「ジャニ担」をしていた。携帯電話もない時代だったので、仕事が終わって自宅に戻った後、光GENJIのメンバーから家に電話がかかってきて「今から焼肉食べたい」と言われることもあった。

そんな時、私はタクシーを拾って都心に向かった。彼らと真剣に向き合うことも、担当者としての仕事だと思っていたからである。

「まだ子どもだ」と思って接すると、彼らはすぐに見抜く。出演者と向き合うということは、自分の本気度と覚悟を試されることでもあった。今振り返ると、こうした行為こそが出演者保護だったのだと思う。

制度ではなく、人が支えていた。

そして、その文化は、私のような駆け出しのADにまで浸透していた。

もっとも、私はここで「昔は良かった」と言いたいわけではない。問題は、当時人が担っていた機能を、現在は何が代替しているのかということである。

では、なぜそれが今は難しくなっているのか。私はその背景に三つの構造変化があると考えている。

第一は、俳優を取り巻く環境の変化である。

近年は大手芸能事務所から独立する俳優が増えている。これは決して悪いことではない。しかし、独立した俳優ほど立場は不安定になりやすい。仕事を失う不安を抱えながら現場に立つ人も少なくない。立場が弱い人ほど「NO」と言いにくくなる。だから本来であれば、テレビ局は以前にも増して出演者保護に力を入れなければならないはずである。

撮影クルーとビデオカメラのシルエット
写真=iStock.com/ppengcreative
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出演者を守る“安全装置”が弱くなった

かつての芸能界では、大手事務所が良くも悪くも緩衝材になっていた。現場で問題が起きればマネージャーが飛んでくる。出演者本人が言えないことを事務所が代わりに伝える。現場の不満をマネージャーが吸い上げる。

トラブルが起きそうになれば事前に局へ連絡する。そのプロセスの中では、時には脅しや揺さぶりのようなカードが切られることもあった。いわば、そうした“機能”とも言える風習が安全装置として働いていた面があったのである。

現在は独立した俳優の自由度も高まった。その反面、交渉力や防御力は個人に委ねられるようになった。つまり出演者保護の必要性は昔より高まっている。にもかかわらず、それを担うはずのテレビ局の能力は弱くなっているのだ。

第二は、出演者依存を強める業界構造である。

テレビを取り巻く競争環境は年々厳しくなっている。配信サービスが台頭し、視聴者の可処分時間をめぐる競争は激化した。その中で、視聴率や配信回数という数字を持っている出演者への依存度は以前より高まっている。そうした状況では、制作側が言うべきことを言いづらくなる。

「口うるさいことを言ったら、今後うちの番組には出てもらえなくなるのではないか」

そんな心理が働けば、率直なコミュニケーションはどうしても不足する。制作会社も事務所も同じような遠慮を抱えながら仕事を進めるため、本来であれば共有されるべき懸念や違和感が、どこかに置き去りにされてしまう。

結果として、問題の芽が摘み取られないまま撮影が進行してしまうことになるのである。