夏は発症リスクが高まる

前述のように、尿路結石は尿中の成分が結晶化し、尿路内で閉塞を起こすことで強い痛みを引き起こす疾患です。この「結晶化のしやすさ」は、尿の濃度に大きく左右されます。

夏場は発汗量が増加し、体内の水分が失われやすくなります。ここで十分な水分補給が追いつかない場合、身体は循環血液量を維持するために腎臓での水分の再吸収を高め、その結果として尿量が低下します。尿量が減少すると、尿中に含まれるカルシウムなどの成分濃度が相対的に上昇するため、「尿が濃縮された状態」となります。

コップの水を蒸発させていくと、水の量が減るほど塩が溶けきれなくなって結晶として現れるのと同じ原理です。濃縮された尿の内部でも成分が「過飽和状態」となり、結石の形成へと進行しやすくなりますCoe et al., 2005

気温と尿路結石の発生率の関連について調べた研究では、気温の上昇と結石発作の発生数は連動することが認められており、気温の上昇に伴い発症リスクは約1.1~1.5倍に増加することが報告されていますNoh et al., 2021; Tasian et al., 2014

つまり、夏は年間を通じて最も発症リスクが高まるピークシーズンといえるのです。

特に、働く世代の日常には、このリスクが潜む場面が数多く存在します。エアコンの効いた室内での長時間のデスクワークであっても、自覚のないまま水分が失われる“不感蒸泄”によって脱水は進行します。また、外回りの営業、週末のゴルフ、屋外イベントへの参加など、発汗量が増える場面では、適切な水分補給が遅れることで尿の濃縮が進行しやすくなります。さらに、「忙しくてトイレに行く時間がないから」と水分摂取を控える行為も、結果的に結石リスクを高める要因となり得ます。

穴にボールを入れるプロゴルファー
写真=iStock.com/jacoblund
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「尿路結石になりやすい人」の条件

尿路結石は単一の原因で発症するものではなく、遺伝的要因、体質、食事などの生活習慣といった複数のリスク因子が重なり合うことで形成されます。

まず、個人の背景にある強いリスク因子として「家族歴(遺伝的要因)」と「代謝異常(肥満)」が挙げられます。

血縁者に尿路結石の既往がある場合、そうでない人と比べて発症リスクは約2.6倍に上昇することが報告されていますCurhan et al., 1997

また、米国で約24万人を対象に行われた大規模調査によると、肥満(BMI 30以上)の人は標準体型の人と比べて、尿路結石のリスクが男性で約1.4倍、女性で約2倍高まることが示されましたTaylor et al., 2005。これは肥満に伴う代謝の変化が、尿の性質を変化させ、結石が形成されやすい状態をつくる可能性があるためと考えられています。