「渡邉さんは日本一のボス」と心酔
渡邉たちはかけ子の感情をコントロールすることにも長けていた。集団生活を送るかけ子たちに厳しく接する一方、ときには甘い言葉もかけた。それも均一化されたものではなく、個別に、である。山田は手紙の中で、錯綜する心情を漏らすこともあった。
「ボスと藤田さんには大変可愛がっていただき、庇いたいという気持ちもありました。庇いたいという気持ちと真っ当に生きようとする自分がいて大変複雑な気持ちです。(かけ子の)みんなは幹部のことを『あいつら』と呼びますが、私にとっては『あいつら』ではありません。渡邉さんは日本一のボスです。集団生活の中で、グループには強い絆のようなものもできていました」
犯罪行為を行っている自覚が消えていくことについても、こう言及している。
「毎日被害を出し続けることによって麻痺していった。現場を見ないで口先だけで指示を出すため、(被害については)ニュースを見ないと分からないこともあった。自分が起こした事件でも『よくあることだ』と認識していました。詐欺も、強盗も、みんなそうだったと思います」
渡邉と一度だけ関係を持った
末端のかけ子や実行役は、幹部からすれば「使い捨て」でしかない。にもかかわらず、実刑判決を受けたあともなお幹部たちを庇う山田の心情は理解しがたいものである。従来の詐欺グループとは一線を画す渡邉の組織の歪な構図が見て取れるようだった。
山田は先述したように、加入から1カ月ほどで組織の中で上位の売り上げを叩き出すようになる。数少ない女性メンバーということもあり、幹部と接触する機会もあった。
ある日、珍しくボスである渡邉がA箱を訪ねてきた。メンバーたちと酒を飲み、酔っ払ったところで山田に近寄る。そして、二人はホテルの一室に消えて行き、数回出し入れするだけの短いセックスをした。行為後、二人は特に言葉を交わさなかった。それでも山田は、組織の中で尊敬を集めていた渡邉に認められたような感覚を覚えたという。
のちに逮捕され、札幌の女子刑務所で取材したとき、面会室で会った山田はまっすぐ私の目を見つめながら告白した。
「酔った勢いで、私はボス(渡邉)と1度だけセックスをしました。ボスは数ピストンで私の中で果てた。以降、詐欺グループの中で20人ほどの男性と関係を持ちました」



