住民基本台帳は正確とはいえない

自治体のデータが標準化システムによって全体集計できるようになるには、まだ10年はかかると見ておいていいだろう。つまり、デジタル庁が想定するペースで行っても、次回、2030年の国勢調査に標準化システムが威力を発揮することはないということになる。

もっとも、現在でも自治体が持つ「住民基本台帳」などの情報は国勢調査でも使われることになっている。国勢調査は全世帯に調査票が配布され、郵送やインターネットなどで回答を集めている。回収できない世帯については担当の調査員が訪問して督促することになっている。

ルールでは、回答が得られない場合には調査員が周辺住民らに聞き取り、家族構成や職業の有無などの情報を調べて代理で記入することになっている。そのうえで、「聞き取り」でも確認できない場合は、役所の「住民基本台帳」などのデータを転載して調査を終えることになっているのだ。最後の最後に自治体データの活用が出てくるわけだ。

ところが、この自治体のデータそのものも問題をはらんでいる。住民基本台帳が必ずしも正確とは言えないのだ。引っ越しをしても住民票を移さない人が少なくないためだ。かつて報じられた例では福岡市の2020年10月の人口が国勢調査では161万2000人だったのに対して、住民基本台帳では156万1000人と5万人以上の開きがあった。全数調査の実態からかけ離れた国勢調査と、正確性に疑問符が付く住民基本台帳のどちらの数が真実なのか、あるいは実態に近いのか。

港区や新宿区の就業状態は「不詳」が4割

国勢調査の「全数調査」という「建前」は瓦解寸前だ。本人からの回答を得られない場合、「聞き取り」に頼ることになるが、調査員が周辺住民らに聞いても、家族構成や職業などは簡単には分からない。かつては町内会があり、町の顔役的な人が存在していて、町内会の住民相互の情報を掴んでいるケースもあった。だが、そうしたコミュニティが壊れて久しい。町内会では個人情報の保護を理由に名簿の作成をやめているところが多い。

特に都会のマンションなどでは隣に住んでいる人の家族構成すら知らない人が増えた。「向こう三軒両隣」と言われたご近所付き合いはほぼほぼ存在しない。つまり、「聞き取り」に出向いても情報は得られないのだ。日本経済新聞によると、2020年の調査で、東京都港区や新宿区の「就業状態」が「不祥」というデータが4割を占めたほか、「配偶者の有無」が「不祥」という割合も2割を超えたという。

東京タワーが見える東京の夜景
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国勢調査は1920年(大正9年)に始められ、ほぼ5年に1回実施されてきた。すでに100年の歴史を持つ。かつては有効だった調査方法がもはや機能しなくなっているのである。