なぜ大金を使ってわざわざ田舎に行くのか?
普通の外国人にはかなりハードルが高いWalk Japanのツアーだが、日本旅行のリピーターの富裕層を中心にじわじわと売り上げは伸びている。ツアーの参加者数は、2019年に4342人だったのがコロナ禍で激減したものの、24年には6241人と回復し、25年は6830人とさらに増加した。参加者の国籍はアメリカ、オーストラリア、シンガポール、香港、イギリスと欧米豪が中心で、日本向けインバウンド旅行者の主流である韓国や中国、台湾の参加者が相対的に少ない。
なぜ彼らは大金を使ってあえて日本の田舎を目指すのか。
「素朴な田舎の風景を見て、そこにのんびりと生活する親切な人たちと触れ合うという体験、欧米人が今までのバケーションではあまり味わったことのない体験ができるからではないでしょうか」
旅行会社ジャルパックでパリやホノルルの駐在員をつとめたのち、10年以上にわたってWalk Japanの経営に携わり、現在もツアーリーダーの一人として活躍する玉置良吉さん(72歳)は話す。田舎を歩くことで、大都市で働きアリのように暮らす日本人というイメージが良い意味で裏切られ、新たな発見をするというのだ。
日本人は自国の美しさを知らない?
同じくベテランのツアーリーダーで商品開発にも関わる日本育ちの米国人マリオ・アントンさん(45歳)も、田舎に住む日本人の「やさしさ」にツアー参加者が魅了されると話す一方で、世界のさまざまな観光地を旅行してきたツアー参加者から国東半島などツアー訪問先の美しさが「世界級」だと指摘されて驚くことがあるという。「日本人は自分の国の美しさをもう少し意識したほうがいいですね」と話す。
「名所めぐりより日本人とのスキンシップを通じて日本の良さを世界中の人に味わってもらいたい」というクリスティさんの仕事への姿勢は日本の風土・文化と日本人への深い愛情に支えられている。
クリスティさんは、ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンを卒業後、日本語の勉強をするため1987年に初来日。川越市のホームステイ先に家族の一員として迎えられ、すっかり日本と日本人を好きになった。
ロンドンに戻ってからも日本の報道機関などで働き、日本と英国を往復する生活を続けるうち、香港大学の教授が1992年に設立したWalk Japanにツアーリーダーとして参加。2002年についに日本への移住を決意。最初から田舎に住みたいと考え、日本人の知人に紹介された大田地区を移住先に選んだ。同年、Walk JapanのCEOに就任して、自宅近くにオープンした蝙蝠亭などのオフィスを拠点に、現在のようなツアーを日本全国で企画・催行するようになった。

