※本稿は、矢野香『いい人で終わらないリーダーは「決めてから話す」 信頼される話し方の本質』(大和書房)の一部を再編集したものです。
ビジネスの場で名乗りたい「一人称」
日常的な場であなたの存在感を高めるやり方があります。それは自分のことをどう呼ぶかです。
あなたはふだん自分のことをどう呼んでいますか。日本語には自分自身の呼称(一人称)にもいろいろな言い方があります。「わたし」「おれ」「あたし」「ぼく」。大学生が「うち」と呼んでいるのを聞いたこともあります。「矢野が」など自分の名前で呼ぶ人もいるでしょう。
本書のテーマであるリーダーとしての信頼感を表現したいなら、「わたくし」と名乗ることをおすすめします。
その響きには重みがあります。特に自信が持てない、自己肯定感が低いと感じている人ほど、あえて「わたくし」と名乗ってみてください。
言葉は内面を映すだけでなく、内面をも形作ります。
たとえば、「わたくし」と言いながら、ドカドカと乱暴に歩くのはどこかちぐはぐです。「わたくし」と名乗ることで、自然と背筋が伸びます。歩き方や座り方、物の扱い方まで整えようとするでしょう。人は、使う言葉にふさわしい自分であろうとするのです。
あなたの振る舞いが変われば周囲の接し方も変わります。「わたくし」と名乗る人に、軽く馴れ馴れしい態度で接することはしにくいものです。
自分の呼び方もまた一種の「宣言」です。周囲に対して自分をどう扱ってほしいかを先に示していく戦略です。
一人称を「わたくし」に変えた効果
気をつけたいのは、場面によって一人称を変えないことです。今日は「わたくし」、明日は「おれ」「あたし」、友達といる時は「ぼく」「うち」……。この揺れは印象の揺れにつながります。10年後の自分をイメージし、少し背伸びをして「わたくし」と名乗るようにしましょう。
友人とのランチで食後の飲み物を尋ねられ、「わたくしはコーヒーで」と言うのは、最初は気恥ずかしいかもしれません。しかし言葉は習慣です。しばらく続ければ違和感はなくなります。
クライアントにも、役員になったのをきっかけに自分の呼称を「わたくし」に変えた女性がいます。男性ばかりの役員会で「わたくしどもの部署では……」などと言うと、場の空気が変わるそうです。声を荒らげたわけではない。主張を強めたわけでもない。しかし存在感が際立ち、強いインパクトを与えているようだとおっしゃっていました。自分をどう名乗るかで、その場での立ち位置が決まるのです。
「わたし」ではなく「わたくし」。たった一音の違いであなたの品格を一段引き上げる力があります。言葉から人格を設計する、まさに「なりたい自分像」である「セルフ・パペット」の実践です。

