なぜ米ドルは「世界のお金」なのか

結局、サウジアラビアが原油の代金として世界中から集めたドルは、アメリカ製兵器の購入代金やアメリカの国債購入などによってアメリカに還流する仕組みです。

サウジアラビアから原油を購入しようとする世界各国はドルで支払わなくてはならないため、一定程度のドルを持っていなければなりません。アメリカのドルが「世界のお金」としての地位を強化することになったのです。原油の購入に必要なドルという構造は「ペトロダラー」(オイルダラー)と呼ばれるようになります。

これは、アメリカにとってはドルが「世界のお金」(基軸通貨)であるための基盤になりますし、サウジアラビアにとっては、イスラム教シーア派の大国イランで起きたイラン・イスラム革命の波及を防ぐ盾を確保したことになります。

その後、現在の湾岸協力会議加盟国のアラブ首長国連邦、クウェート、オマーン、カタール、バーレーンとも同様の密約を締結しました。

100ドル札の背景に浮かぶ石油ポンプの影
写真=iStock.com/Max Zolotukhin
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アメリカの弱みが露呈した“ある出来事”

アメリカは、このような密約をサウジアラビアとの間に結んでいることから、サウジアラビアの体制を批判することができません。そんなアメリカの弱みが露呈したのが2018年の出来事でした。

この年の10月、サウジアラビア人のジャマル・カショギ記者は、婚姻届を出すためにトルコのイスタンブールにあるサウジアラビアの領事館を訪ねます。同行していた妻は領事館の外で待っていたのですが、いつまで経っても夫は出てきません。それもそのはず、領事館の中で殺害され、遺体はバラバラにされていたのです。

トルコのイスタンブールにあるサウジアラビアの領事館内で殺害された故ジャマル・アフマド・カショギ記者
トルコのイスタンブールにあるサウジアラビアの領事館内で殺害された故ジャマル・アフマド・カショギ記者(写真=April Brady / POMED/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

カショギ記者は帰ったという形を取るものでした。身体つきが似ている男性が領事館から出る姿が監視カメラに写っていました。夫が出てこない、と妻がトルコの警察に相談したことから、事件が発覚しました。領事館が組織ぐるみで殺人と証拠隠滅をしていたのです。

ところがトルコの諜報組織は、サウジの領事館の内部の様子を盗聴して記録していました。カショギ記者が殺害され、遺体がバラバラにされる一部始終が録音されていたというのです。

カショギ記者は生前、アメリカの『ワシントン・ポスト』にサウジの現体制を批判する記事を寄稿していました。このために殺害されたと見られています。