屋根裏全体が「暖房装置」に変わる

屋根材が受け取ったエネルギーの一部は、外気へ対流や再輻射として逃げます。しかし、同時に相当量のエネルギーが屋根材内部へと伝導し、野地板や垂木へと流れ込みます。

ここまでは、多くの人が想像しやすい熱の流れです。問題は、その先にあります。屋根裏は、構造上、外部と比べて熱がこもりやすい閉鎖空間です。換気が不十分であれば、熱せられた空気が滞留し、屋根裏全体の温度が上昇します。すると、屋根裏に面するあらゆる面、つまり野地板の裏側、垂木、断熱材の表面、さらには天井材そのものが、高温状態になっていきます。

ここで発生するのが、輻射の連鎖反応です。高温になったこれらの表面は、それ自体が輻射源となり、室内側へ向けて絶えず輻射エネルギーを放出します。輻射熱の特徴は、空気の温度を介さず、直接エネルギーが届く点にあります。つまり、天井裏の空気温度が多少下がっていたとしても、天井材の表面温度が高ければ、その下にいる人間は強烈な輻射を受け続けるのです。

この状態は、いわば屋根裏全体が巨大な輻射パネルに変貌した状況だといえます。しかも、この輻射は一方向的です。室内側は冷房などによって温度が低く保たれているため、エネルギーは常に「屋根裏→室内」へと流れます。熱力学の基本原理に従い、高温側から低温側へ、輻射エネルギーが止まることなく供給され続けるのです。これが「輻射の暴走」と呼ばれるものです。

断熱材
写真=iStock.com/photovs
※写真はイメージです

「断熱材があるから大丈夫」は誤解

このとき、多くの人が誤解しやすいのが、「天井に断熱材が入っているから大丈夫だ」という認識です。

確かに断熱材は、伝導による熱移動を遅らせる効果を持ちます。しかし、断熱材の表面自体が高温になれば、その表面から輻射は発生します。断熱材は熱を遮断する壁ではなく、熱をため込んで流れを緩やかにする層にすぎません。日本遮熱の研究データでも、屋根裏側の断熱材表面温度が上昇すると、室内への輻射負荷が急激に増大することが確認されています。

この現象は、人間の体感に直結します。室温計が示す数値が26℃や27℃であっても、「なぜか暑い」「頭の上から焼かれるように感じる」という不快感が生じます。これは、空気温度ではなく、人体が受け取る輻射エネルギー量が過剰になっていることが理由です。天井という「人工の太陽」が、いつも頭上で輻射し続けている状態だと考えるとわかりやすいかもしれません。

さらに厄介なのは、冷房運転がこの輻射の暴走を根本的には止められない点です。エアコンは主に空気を冷やします。対流を制御する装置であり、輻射源そのものを冷却する機能は限定的です。そのため、冷房を強めれば一時的に体感は改善しますが、屋根裏や天井表面が高温のままである限り、輻射は止まりません。

結果として、冷房負荷が増大し、エネルギー消費が増え、なおかつ快適性は完全には回復しないという悪循環に陥ります。