授乳しないと低血糖や脱水になる

そもそも乳児はおなかがすいたり、喉が渇いたりしたら泣くなどの合図で知らせますが、そのタイミングを完全に予想することは親でも不可能です。当然のことですが、「少し待っててね」という説明を聞いてくれるような理解力や判断力はありません。

何より乳児は体全体が小さいので、本人がほしがったタイミングで母乳やミルクを与えないと、低血糖や脱水になるリスクが高いのです。つまり、乳児の健康や命がかかっています。長時間あげないというわけにはいきません。

しかも、子どもの月齢や飲み方によって大きく差がありますが、一回の授乳には少なくとも10分はかかります。長い場合は30分ほどかかることもめずらしくありません。それを1日に5〜10回以上も繰り返し行うわけですから、いちいちトイレや授乳室に行けと言われても困るでしょう。

また、「ミルクという便利なものがあるのに、人前で母乳を与えたいというのは母親のエゴだ」などという批判もありましたが、これもおかしなことです。育児用ミルクか母乳かを選ぶのは母親の権利です。

そして、母乳は乳房から吸い取られることで、新たに作り出されます。母乳が溜まったままにすると、乳房が痛くなったり発熱したり、詰まって乳腺炎になったりすることも。さらに、体がもう母乳は不要なのだと判断することで分泌量が減り始めます。いったん、母乳を減らす方向になった体は、母乳を増やす方向に再転換するのに苦労します。

赤ちゃんにも母親にも自由がある

以上のように、乳児はどこにいても、本人がほしいタイミングで母乳あるいは育児用ミルクを飲む必要があります。母親にも、母乳を与える自由、育児用ミルクか母乳かを選択する自由があります。それが法律で保護されている国もあるほどです。

例えばイギリスでは、店舗、レストランやカフェ、図書館、映画館、公共交通機関、公園などで授乳する女性を不利益に扱うことは差別とされます。具体的には「授乳するなら出ていってください」「トイレで授乳してください」「隠れて授乳してください」「他のお客さんが嫌がるからやめてください」といった対応は違法となる可能性があります。さらにスコットランドでは、2歳未満の子どもへの授乳を妨害すること自体、刑事罰の対象になることがあるのです。

他にも、アメリカでは連邦法と州法で保護されていますし、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、北欧諸国、フランス、ドイツで「授乳を理由に不利益な扱いをしない」という差別禁止の枠組みで守られています。

当然のことですが、こういった法律がなくても、母親にも他の人と同様に自由に外出する権利があります。「子育てしているときくらいカフェを利用しないで家にいなさい」とか「育児用ミルクにしなさい」などと言う権利は誰にもありません。

年子批判も授乳批判も、日本が少子高齢化したことによって、子育てを知らない人が増えたことも大きな原因のひとつでしょう。それがまた少子化の原因になります。誰もが生きていきやすい、そして子育てがしやすい社会になってほしいと心から願います。

※5 Breastfeeding while out and about - Maternity Action
※6 Breastfeeding - Citizens Advice

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