「あなただけのおいしい話」は存在しない
最後に、現在は執行猶予中であるA氏に、騙されないようにするにはどうすればいいのか。注意点を聞いた。
「多くの人が往来するホテルのロビーなどは、詐欺の同業者が複数いました。目を見ればだいたい予測がつきますし、“獲物”を探すときの行動は旅行者のそれとは明らかにことなるので観察すれば発見がたやすい。さまざまな手口で詐欺師はあなたに近づいてきます。
ただ、原則として、『あなたにだけに来るおいしい話はない』と知っておいてほしいです。詐欺師はさまざまな方法で自分を大きく見せようと、運用実績などを語ります。ですが、個人で人の金を預かって投資する人間のほとんどは運用実態がありません。もしも本当にみんなが驚くほどの実績があるのだったら、その人はすでに大手証券会社からヘッドハンティングされているはずなんです。ホテルのロビーでうろうろしているはずがありません。自分の身に起きたことを冷静に分析して、被害に遭わないように判断していただければと思っています」
ホテルや新幹線など、私たちが「非日常」を過ごす空間は、警戒のハードルが下がりがちだ。詐欺師が狙ってくるのはその緩みなのか。開放的になる場所にこそ、罠が仕掛けられていると疑う必要があるのかもしれない。
一方で、人を騙していたA氏の内実は、決して優雅とは言えなかった。A氏は取材中に何度も「後悔している」と漏らした。詐欺師でいる間は、眠りも浅く、深い呼吸ができなかったのだという。人生が詐欺と無縁であるために、どのような関係性の知り合いであってもフラットな目で見ることが肝要なのだろう。


