クレジットカードを悪用した“転売”

2つ目の詐欺パターンは、相手のクレジットカードで何かを買わせて、それを転売することで現金化する手法だ。

前述のとおり、関西地方で飲食店を営んでいたA氏は、あらゆる経営者仲間から投資のための金を募り、投資に使うと嘘をついて運転資金にしていた。完全に督促を無視することはなく、月に数万円でも必ず返済して関係性を続けた。だが経営していた飲食店が倒産すると、関西地方にはいられない。そこで見知らぬ土地を転々として、新たな“獲物”を捕まえたときにやっていたのが、クレジットカードの手法だ。

たとえば有名ブランドのバッグなどの値打ちが高いものを複数の“獲物”に買ってもらい、手元に1つを残して売りさばく。最初のうちは返済をきちんとするが、徐々にフェードアウトしていくのは投資詐欺のときと同様だ。

もうひとつ、A氏がクレジットカード詐欺で買わせていたものに、新幹線の回数券がある。

「地方から東京に出てきて、友人関係がまだ構築できていなそうな人に話しかけるんです。『俺も田舎から出てきてぜんぜん友達いないねん』と最初は近づきます。それで、新幹線の回数券を買うためにクレジットカードを切ってもらうんですね。場合によっては、その子のご両親にお願いすることもありました。高級バッグよりもお金を出してくれやすいですよ」

ホテルのロビーに注意、テーマパーク併設も対象

A氏の毒牙にかかった筆者の友人もそうだが、騙されてなお氏に絶大な信頼を置いている被害者がいるようだ。氏の弁によれば、「逮捕されてからも、信頼してくれる被害者がいて、『他の人に先返してあげなさい』と言ってくれる」とのこと。この点について、筆者は“獲物”への近づき方が巧みであることと、ある部分まではA氏自身も本気で人間関係を構築しようとしているからではないかと考えた。

なぜ被害者は騙されてなお、信頼を寄せるのか。筆者が水を向けると、A氏は「詐欺師は異常に記憶力がいいことが多いので、『特別な配慮をしてくれている』と思ってもらえるのかもしれません」と言った。

続けて、「日常生活の少しだけ特別な1コマ、たとえば旅行先などに、詐欺師が入り込むことがある」と警鐘を鳴らす。

「私が詐欺師時代によく訪れていたのは、高級ホテルやリゾートホテルのロビーやラウンジです。有名テーマパークにあるホテルもそうです。近づき方は、たとえば子供連れならちょっとしたおもちゃやお菓子を買ってあげるんです。でも男一人だとさすがに不審ですよね。だから女性と一緒に旅行をする。そして『あんまり可愛いんで、ハイチュウ買っちゃいました、すんません』みたいに親御さんに謝ります。その日はそこで終わりにします。

そして翌朝、もっとも混む時間帯を狙って、朝食会場に行く。その家族が来る可能性は高いし、混雑していれば会話も聞こえにくいから席を近づけても不自然ではありません。そうやって『旅行から帰ったら連絡しますね』と連絡先交換だけをして、目的は果たされる。これを1日で6組くらいやるのです」

ロビー
写真=iStock.com/hxyume
高級ホテル・リゾートホテル・テーマパーク併設のホテルの「ロビー」は注意が必要だという。(※写真はイメージです)