電話の演技で「金がありそうな素振り」

家族連れの場合は子供が会話の糸口になるが、それは犬や猫にも置き換えられるとA氏は話す。そして旅行が終わってから、外食をしたり、あるいは自宅に招かれるなどして、関係性を深めていく。

「夫婦をターゲットにするときは、奥さんが喜ぶように動きました。外食の場合はブランド物のハンカチ、自宅の場合は『奥さん、今日ご飯作らんで大丈夫ですよ』とあらかじめ言っておいて、叙々苑弁当を持参することが多かった」

もちろん、そのあと投資の話に誘導するが、ここにも詐欺師ならではの罠が仕掛けられている。

「基本は、ちらっと金がありそうな素振りを見せつつ、無理に誘わないことです。たとえば仲間と電話をしている声を聞かせる。電話越しの仲間と結託して、億単位の取引を成功させているかのように演出する。その際、手元が狂って間違えてスピーカーにしてしまったかのように演技をして聞かせる。

『あぁ、すんません、音うるさいですよね』とか謝りながら相手の反応を見ました。仮に投資に乗り気な相手だとしても、『いやいやボクが詐欺師かもしれませんから! ね? いったんお金は出さんときましょ』みたいにストップを掛けて、相手に判断させるようにします」

新幹線で“隣に座った他人”に注意

ほかにも、”ちょっとだけ特別な日常”のなかに詐欺師が紛れることはあるのだとA氏は警告する。

「新幹線移動も危険が潜んでいます。隣にひとりの客が座ったときは、詐欺師にとってはチャンスになってしまう。昔は移動販売があって、車両内を練り歩いていました。販売員さんに『こちらのお兄さんに渡してください』とか言って、その人の分もお金払ったりして、それで乾杯して、ちょっとだけ自分の話をする。『田舎から出てきて友達おらんのです』とか『やってた会社があったんですが、潰してしもて』など。興味を持ってもらったら、新幹線を降りるときに連絡先を交換します。あとは同様の流れです」

新幹線
写真=iStock.com/JianGang Wang
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単なる移動が、詐欺師にとっては接点を作る格好の場になる恐ろしさ。旅行中、出張中など、実にあり得そうな話である。ちょっと良さそうな偶然の出会いに、注意が必要なのが、怖さを感じる。

だが、市井の人々が一度詐欺師に目をつけられれば、絡め取られてしまうことはある。元詐欺師であるA氏からみて、詐欺師に共通する特徴は何か。