おでん鍋はあえてフルオープンに

「資さんうどんは、シニアの利用比率も高いんです。福岡うどんみたいにド真ん中のやわやわでもなく、讃岐うどんのコシでもなく、この真ん中にいることが大きいと思います。だから、老若男女問わずさまざまなお客様に来ていただけている。実際に関西でもこの出汁とうどんで受け入れられていることも、全国展開への自信になっています」

資さんうどんの特徴の一つに、うどん専門店でありながら、丼ものや、天ぷら、おでんなどサイドメニューの豊富さがあげられる。これらのメニューも店内で調理している。

崎田氏が代表に就任して間もなく、ある店舗のおでん場を「フルオープン」に戻させたエピソードがある。

「北九州にある昔ながらの資さんの店舗に行くとキッチンが丸見え。そのそばにあるおでん鍋からは湯気が出ていて、なんともおいしそうなシズル感があった。これが、近年の新店舗では隠れるような設計になっていた。私は、なぜ一番大事なところを隠しちゃったのかなと思い、おでんはオープンに戻したのです」

店内にある「おでん」コーナー。資さんうどんでは、どんが出来るまでの間、おでんをつまむのが定番だ。
撮影=プレジデントオンライン編集部
店内にある「おでん」コーナー。資さんうどんでは、うどんが出来るまでの間、おでんをつまむのが定番だ。

湯気、調理の音、揚げたての香り――。崎田氏が店内調理にこだわるのは、味そのものだけでなく、そこに付随する五感の体験こそが外食の本質だと考えているからだ。

「食事って食べるだけじゃないんですよね。お腹を満たすだけだったら別の方法もあるわけです。でもレストランってそうじゃない」

「絶対に成功しない」という考え方

疑問なのは、崎田氏はなぜここまで「非効率」ともいえる道を貫くのか。それを解き明かすために、少し長くなってしまうが、崎田氏の来歴を振り返りたい。

崎田氏はさまざまな外食チェーンに携わったのち、2009年、すかいらーくグループのトマトアンドアソシエイツへ。複数のグループ会社の役員や代表として多くの業態を手掛けてきた。例えばや「ラ・オハナ」、「むさしの森珈琲」、「イタリアン リゾート ペルティカ」などがそうだ。

興味深いのは、崎田氏は新業態をつくる際に「絶対に成功しない」と念頭に置くという点だ。

「自店のチェックや視察に行ったお店では、席に座って床、壁、天井、触れるものはすべて触って、座った景色を頭に残す。窓からのぞく外の景色、他のお客さまの会話内容、些細なことも情報として叩き込み、ターゲットが誰なのか、どういう利用シーンなのか、あらゆる角度から考えます。

その時、必ず『絶対に成功しない』と思い込みます。だから徹底的に調べて考える。業態ができるまで1年以上、ずっと考え続けることもある。自分の中のクエスチョンが解消されるまではオープンしません」

崎田氏の戦略の根底には、創業者の大西さんへの敬意がある
撮影=プレジデントオンライン編集部
崎田氏の戦略の根底には、創業者の大西さんへの敬意がある

「消費者目線」で店づくりを行い、そしてトップでありながら「現場目線」を持つからこそ、数々の新業態をヒットさせてきたのだろう。だが、これまで述べてきたように資さんうどんでは、これまでのやり方とは違うアプローチをとった。根底にあるのは創業者への敬意だ。