最悪の場合、入院中に餓死してしまう
実はこの程度の点滴で何も食べずに入院している方は、今でも少なくありません。極端な場合には、何も食べていないのに生理食塩水しか点滴されていなくて、1日エネルギー摂取が0キロカロリーという方もいます。1日0~300キロカロリーしかエネルギーを摂取していなければ当然、栄養状態は悪化してやせていきます。このような状態のときにリハビリテーションで筋力トレーニングを頑張っても、筋肉が増えることは絶対にありません。最悪の場合、入院中に餓死してしまった方もいました。
こういったことをなくしたいと考えて、私が提唱したこの概念を基に、2011年に日本リハビリテーション栄養学会(最初は研究会)を立ち上げました。興味がある方は、「マンガでわかるリハ栄養」を見ていただければと思います(※5~6)。私もマンガに登場しています。
[実例]70代女性のFさんは、身長152cm、体重42kg、BMI18.2と低体重、低栄養を認めていました。大腿骨近位部骨折で入院、手術を受けた後に、リハビリテーション目的で、回復期リハビリテーション病院に転院して、1日3時間の訓練を行いました。小柄な高齢者ということで当初は1日1400キロカロリーの食事にしていましたが、入院後3週間で体重37kgと、5kgも体重減少して危険な状態となってしまいました。
体組成計で体脂肪率を測定したところ8%で、高齢女性でしたが筋肉量が多く体脂肪量が少ない体型で、基礎エネルギー消費量が高く、太りにくい体質であることがわかりました。そのため、医師と管理栄養士で相談しながら段階的にエネルギー量を1日2500キロカロリーまで増やしました。かなりの食事量でしたが、残すことは全くありませんでした。その結果、退院時の体重は42kgまで戻りました。
Fさんに自宅での食生活を聞いてみると毎日、たくさん食べているけれど全然太らないと言っていました。小柄な高齢者でも大柄な方以上にエネルギーが必要な方もいて、個人差はとても大きいので、自身の体質を知ることが重要です。
医師や看護師に最初に相談すべきこと
医原性とは、医師や看護師などによる医療行為で生じることです。サルコペニアとフレイルの一部は、残念ながら医原性です。例えば、急性期病院に誤嚥性肺炎などで入院すると「とりあえず安静」「とりあえず禁食」「とりあえず点滴(1日0~300キロカロリー)」と指示されることがあります。そうすると、体ものども動かさないので、筋肉や筋力が低下します。また、エネルギーが足りませんので、体脂肪と筋肉量が低下します。これらの結果、入院中にサルコペニアとフレイルになってしまう場合には、医原性サルコペニア、医原性フレイルと呼びます。本来は、入院後2日以内に適切な評価を行い、早期離床と早期経口摂取が可能であれば、安静や禁食を解除すべきです。
また、入院直後から適切な栄養管理を行うべきです。医原性サルコペニアと医原性フレイルの予防には、入院しないことがベストです。どうしても入院が必要な場合には、できるだけ早く退院できるように、入院当日からリハビリテーションと適切な栄養管理や管理栄養士による栄養指導を行ってもらえるよう、医師や看護師に相談することをおすすめします。
「入院したら、できるだけ早くリハビリテーションを始めたいのですが、可能でしょうか?」「食欲がなくても栄養が摂れる方法について、管理栄養士の方と相談できますか?」などとご相談ください。
参考文献
5) マンガでわかるリハ栄養Vol.1 急性期編
6) マンガでわかるリハ栄養Vol.2 回復期編


