マスク氏と対峙したチョードリー氏の指摘
政治学の博士号を持つチョードリー氏は、コンサルティング会社アクセンチュアでAI倫理を手がけるディレクターとして勤務。21年に旧ツイッターに入社し、AI倫理の部門の責任者となった。AIのバイアスやリスクに特化する「META(Machine Learning Ethics, Transparency and Accountability:機械学習の倫理、透明性と責任)」と呼ばれる部署を率いた、AI倫理の専門家だ。
だが、22年にイーロン・マスク氏がツイッターを買収した直後、大量解雇の対象となった。
退社後は、「マスク氏がツイッターの文化を殺すのを内部から見た」と題する寄稿を出すなど、マスク氏への批判を強めていく。
チョードリー氏はその後、AIの検証を手がけるNPO「Humane Intelligence」を設立。23年の米「タイム」誌の「AIに影響を与えた100人」にも選ばれた。
問題なのは「人がAIを使って何をするか」
「『ツイッターの死』からみえてきたのは、多くの人が他のソーシャルメディアの居場所を探しながらも苦労しているということ。興味深いのは、イーロン・マスク氏という1人の人間が、たった数カ月でツイッターの文化やプラットフォームを破壊できてしまうということだ」。チョードリー氏はそう話す。
「これは、すべてのテクノロジーは技術的な問題ではなく、人間自身の問題だということを示している。AIにも同じことがいえる。いかに高速でデータが処理できるかといった技術的なことは関係ない。問題なのは、人間がテクノロジーを使って何をするかだ」
AIの問題について彼女がさらに強調したのが、専門家に任せきりにするのではなく、テクノロジーに詳しくない一般の人々の関与こそが重要だという点だ。
「AIがブラックボックスだというのは錯覚のようなものだ。AIは複雑なシステムだが、大半の人はAIモデルのしくみの詳細について知る必要はない」。チョードリー氏はそう訴えた。
「大切なのは、AIを批判的に分析する能力だ。ネット上の情報が信頼できるかを見極めたり、AIの出力結果を批判的に見たりする力こそ重要だ」


