AI分野は「大学の学位は必要ない」
米国の私立大学の学費は1年で約4万ドル(約620万円)。一方、コミカレは州内の学生なら2年間で5000ドル(約78万円)前後で学べ、地方の低所得層にも教育機会が広がる。
米国で大学の在籍者数が減少傾向にあるなか、米教育統計センターによると、全米のコミカレの在籍数は22年、12年ぶりに上昇に転じた。
HCCは全米の中でもAI分野で定評がある。同校の学生は22年、25カ国から1000人以上が参加したAIコンテストで優勝した。サベルさんは「コミカレには多くの技能を持った学生がいる。この分野では大学の学位は必要ない」という。
マイクロソフトやアマゾンなどのIT大手企業もコミカレへの支援を進めている。企業向けのクラウド事業などのビジネスを拡大するため、多くのIT人材が不可欠だからだ。
HCCは23年、アマゾンのクラウド事業「AWS」などの支援を受け、全米のコミカレで初となる大学学位と同等のAIコースを始めると明らかにした。
米国でコンピューターサイエンスの学位を取って卒業する人は毎年約10万人。約490万人の学生が通うコミカレは、実践的なスキルをつけられる重要な受け皿として期待が高まっている。
発起人は元ツイッターのAI倫理専門家
ラスベガスのAI検証イベントを企画した一人が、旧ツイッター(現X)でAI倫理のトップをつとめていたルマン・チョードリー氏だった。
「異なるバックグラウンドや技能を持った人が基盤モデルを試し、最新のAI技術について批判的に考えることを学んでほしかった」
チョードリー氏はイベントの狙いについて、私にそう話した。
「偽情報や差別、アルゴリズム(計算手順)の偏りといった問題の解決には、多様な視点や経験が必要になる」
シリコンバレーのIT企業では、白人の男性が多いことが問題視されてきた。人種や国籍、経済状況が異なる人たちがAIの開発や検証にかかわることで、偏りなどを改善できる。参加したほぼすべてのAI企業が、複数の言語でのAI開発に関心を示したという。
コンテストの背景には、悪気のない利用者が不適切な回答を意図せず引き出してしまうことへの懸念があった。専門家の間では「埋め込まれた弊害(embedded harm)」と呼ばれる。AIのリスクについては、こうした意図しない結果による影響を重視しているという。
「AIはすでにあらゆる場面で使われており、様々な意思決定をしている。人類を滅ぼす悪意あるAIよりも、アルゴリズムによって黒人への融資を拒否してしまうような状況を懸念している。いままさに多くの人に起きていることだから」

