重要なカギとなる参加者の多様性
このコンテストは、カテルさんら3人のAI専門家らの会話から始まった。
23年2月に首都ワシントンの連邦議員との会議でアイデアが浮上。当時のバイデン政権もAIのリスク軽減策で、オープンAIなどの開発企業に協力を求めることを検討するなかで、それぞれの思惑が一致した。毎年恒例のハッカーイベント「DEFCON(デフコン)」の場を使い、米政府も支援する形で実現した。
会場には、セキュリティーのプロからプログラミングの経験のない弁護士や大学生など、様々な人がいた。
主催者らによると、こうした「多様性」がカギだという。
生成AIが作り出す回答のバイアス(偏り)を減らすには、開発にかかわる人の多様性の確保が重要になる。人種や経済環境の壁を越え、幅広く若者にITスキルを身につけさせる場として米国で注目されているのが、二年制の公立の教育機関コミュニティーカレッジ(コミカレ)だ。日本でいう短期大学に近い。
コミカレの学生が支えるAIの公平性
ラスベガスのコンテストでは、全米18州から約200人のコミカレの学生が参加した。コミカレは四年制大学に比べ、ヒスパニックや黒人の学生の比率が高い。
「AIは公平なものであるべきだ。みんなが(議論に)参加できると感じられるようにしたい」
コンテストの企画にかかわった、デンゼル・ウィルソンさん(26歳)はそう話した。黒人のウィルソンさんは、コロナ下で石油関連の仕事を解雇された後、地元ヒューストンのコミカレで2年間AIを学んだ。勉強に真剣に向き合ったのは初めてだったという。
ウィルソンさんの出身校、ヒューストン・コミュニティー・カレッジ(HCC)のデジタルIT学部のサミル・サベル学部長は「大学の学位レベルのコミカレがいま、米国で大きく変わっている」と話す。フロリダ、カリフォルニア、ワシントン州などで「毎年40、50の新たなコースが立ち上がっている」という。
「なぜこの傾向が重要なのか。それは授業料が極めて手頃だからだ」。サベルさんはそう強調した。

