ナフサ由来製品の流通は複雑

ナフサは原油を製油所で精製したときに、ガソリンや灯油、軽油と同時に出てくる。製油所で得られたナフサのうち、石油化学原料として使われるものは、クラッカーと呼ばれる設備に送られる。

クラッカーとはナフサの分解炉で、エチレンやプロピレン、ブタジエン、BTX(ベンゼン・トルエン・キシレン)などの、プラスチックや塗料、接着剤、洗剤のもとになる石油化学基礎製品がここで作られる。

これらの基礎製品はさらに、化学メーカーに送られ、ポリエチレンや塗料原料、合成ゴム、合成繊維原料などの石油化学誘導品に変わる。石油化学誘導品が関連産業の工場に送られ、食品包装材や自動車部品、家電製品、衣料、日用品向けの素材として加工される。これらを各業界の卸売業やメーカーが出荷/製品化する、というのがサプライチェーンの大まかな流れだ。

石油化学プラント
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ところが米国とイランの軍事衝突でホルムズ海峡の航行が不安定化し、世界中の燃料価格が高騰することとなった。原油の9割以上を中東に依存していた日本にとっては大打撃であり、特に石油化学業界に激震が走っている。

85%まで回復=15%は足りていない

こうした未曾有の危機の中、日本政府がナフサの量について「従来の85%の水準まで回復する(※)」〔中東情勢に関する関係閣僚会議(第9回)より〕と発信しているのは、①日本の製油所で原油を精製したときに得られるナフサ、②代替として新たに外国から輸入したナフサの2つを総合してのことである。

(※)政府は同時に、川中の製品在庫の活用と川中の製品調達を進める、としている。

だが、量は足りていても、先に見たように、ナフサに由来する製品のサプライチェーンは非常に長大かつ複雑だ。

赤沢大臣が「事業者からすれば、お得意様に来月商品を出せるようにするために、供給量を絞ることは十分に合理的」と9日の記者会見で分析したように、これほど複雑なサプライチェーンで商売をするメーカー・卸売業にとっては、ホルムズ危機で『買い溜め』をすることは経営上当然だとも言える。総量が読めない、と経営陣が判断したとすれば、予防としてたくさん買ったり、供給を絞ったりするのが自社の生き残りに直結するからである。

松方氏も「そもそも、政府が言う『85%の水準まで回復する』の裏を返せば、15%は足りていないということ。ホルムズ危機の前まで『15%余計にナフサを持っていた』わけではない以上、川中・川下の事業者が不安を覚えるのも当然」だと強調する。

各社の行動がサプライチェーン上で「目詰まり」を起こしていたとして、お得意様に商品を買ってもらえなければ自社が損をする。個別最適が全体最適につながらないのも無理はない。