周囲の人を自分の「写し鏡」にして

30代を振り返り「やっておけばよかったこと」は何か尋ねてみると、向井さんは「私、後ろを振り返らないから! 1週間前のスケジュールだって、全部頭から消えているほどよ」と笑いながら言った。あえて挙げるなら、けがをしないように避けていたスキーと、バックパックでの貧乏旅行だという。

続いて「やらなければよかったこと」を問うと、長考ののち「一目ぼれして、似合わない洋服を買ってしまったことかしら……」というチャーミングな答えが返ってきた。

「マネキンが着ていてね、素敵だなーと思って買ったんだけど、帰って着てみたら、全然似合わないの! これ、買わなきゃよかったなって」

うきうきと袖を通したものの、鏡の前で凍り付く若き日の向井さんを想像して、自然に頬が緩んでしまう。

ふと「向井さんでも、自分が見えなくなることはあるんでしょうか」と聞いてみた。向井さんは「自分がやりたいこと」の解像度がとても高いと感じたからだ。

すると、次の答えが返ってきた。

「自分の姿は、自分ではわからないものよ。だからこそ失敗を恐れず、恥ずかしがらずに周りからフィードバックをもらって、少しずつ変えていけばいいと思う。『恥をかきたくない』なんていうプライドを持っていたら、自分が損するだけなんだから!」

150歳への助走

70歳を過ぎても、向井さんの宇宙に対する興味・関心は尽きない。現在は、宇宙空間で人間が健康的に暮らすための研究をしているという。

「私たちってね、生物学的には120歳まで生きられるはずなのよ。今も医学はどんどん発達しているし。

目が悪くなればメガネをかけて、心臓が悪くなればペースメーカーや人工心臓を入れるじゃないですか。もしかすると、自分の脳や意識さえ残れば、体をすべてリプレイスしながら150歳を超えて生きられる未来が来るかもね!」

もしも『銀河鉄道999』のように機械の体を手に入れたなら、向井さんは再び宇宙へ向かうに違いない。30代のころと変わりなく、向井さんは未来に向かって助走を続けている。

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