手軽な「ちょっとしたフェイク」の危険度
こうした状況を前に、私たちができるのは「一呼吸置く」ことである。
届いたメッセージをそのまま信用せず、公式アプリや公式サイトで確認する。URLはクリックせず、自分で検索してアクセスする。迷ったときは家族や友人に「こんなメッセージが来たが大丈夫だろうか」と相談する――それだけで被害を防げる場合は多い。
メールやSMSは便利であるがゆえに、詐欺の入り口にもなり得る。手口は人の心理や習慣を突くように設計されており、誰もが騙される可能性がある。結局のところ、「少し立ち止まる」「確かめる」という習慣こそが、被害を防ぐ最大の武器になるのである。
日常的でささいに見える情報の中にも、気づかぬうちに誤りは潜んでいる。そしてその「ちょっとした誤情報」が、私たちの行動や判断を静かに変えてしまうのである。
たとえばSNSでよく目にする健康情報である。
「毎日レモン水を飲むとがん予防になる」「このサプリを摂れば免疫力が劇的に上がる」といった投稿は、科学的な根拠が不十分であることが多いにもかかわらず、手軽さや安心感を求める気持ちから広く拡散される。
真偽はさておき「体によさそうだ」と思わせる言葉や写真が添えられていると、人は疑うより先に試してみたくなるのである。
“本音”を装うステマ投稿の拡散力
実際、海外の研究では、健康・医療分野のフェイク情報がSNS上で正確な情報よりも頻繁に共有され、拡散のスピードや規模が大きくなりやすいことが報告されている。
また、身近な商品やサービスに関する口コミも侮れない。
「あの食品には危険な成分が入っているらしい」「この化粧品を使うと肌が荒れる」という投稿が拡散されると、たとえ根拠が薄くても購買行動に影響を与える。情報の真偽を見極めるのは難しくても、不安や疑念を煽る内容ほど人々の記憶に残りやすいのである。
意図的に仕掛けられる「ステルスマーケティング(ステマ)」もある。
ステマとは、企業や広告主であることを隠し、あたかも一般消費者の自然な口コミのように装って商品やサービスを宣伝する手法である。SNSのレビューやブログ記事、インフルエンサーの投稿に紛れ込むと、私たちはそれを「他人の本音」だと誤解してしまいがちである。
とりわけ化粧品や健康食品の分野では、実際に効果を体験したかのように見える投稿が多く見られるが、その裏側には報酬を受け取って商品について良いように書かれたケースが少なくない。
逆に、競合他社の商品を貶めるような虚偽のレビューが意図的に書き込まれることもある。こうしたフェイクレビューは個人が勝手に行っているだけではなく、レビューを書く人と企業を仲介する業者が存在することも明らかになっている。

