赤字でも防衛を切り捨てなかった成果
【宮崎】エナジーはもちろん収益性が高いんですけど、株価の評価がドンと上がっているのは、やはり防衛の収益拡大への期待が高まったのが大きいかな、と。
【阿部】PER(株価収益率)も2024年から上がってるね。1株あたりの利益に対する評価の割合が急速に拡大したということ。ただ、それまでの評価があまりに低かったという言い方もできます。
【宮崎】航空・防衛・宇宙セグメントに関しては4年前まで、ほぼ利益は出ていませんでした。けれど、たとえ赤字であっても、技術としては保有し続けなければならない。低採算のものも含めて複数の事業を国防のために維持する必要があって、三菱重工自体が一種コングロマリット(複数の事業を持つ複合企業)化してきたのだろうな、と思います。
【藤吉】もともとの祖業というのは造船ですよね?
「多数の事業を長く続ける」企業は強い
【宮崎】そうですね。1884年(明治17年)に官有の長崎造船局を事業承継したのが始まりです。興味深いのは、それがコングロマリット化していく過程で、これまでに何度となくセグメント(事業区分)を入れ替えて、“見せ方”を変えているんですよ。
例えば2010年ごろは「船舶・海洋」「原動機」「航空・宇宙」というような7つのセグメントで分けていたんですが、直近では「エナジー」と「航空・防衛・宇宙」という2つを、大きな成長の柱として見せています。いずれにしろ大型の動力システム、つまり「燃料を燃やし、回転エネルギーを生み出し、巨大な動力に変える技術」が、すべてのセグメントに共通する「コア技術」ということになります。
【藤吉】このスライドには撤退事業も書いてありますね(図表2)。
【宮崎】あえてそれを書いたのは、複数の大きな成長事業をやっているのに対し、実は大きな撤退は過去はあまりしていないということを言いたかったんです。
それこそ2010年ごろとかは、株式市場から“コングロマリットで評価しづらい”という批判もあったので、セグメントの見え方をシンプル化したんですが、大きな撤退はあまりしていない。
実際にやめたのは工作機械(2021年売却)、МSJ(旧MRJ)のジェット旅客機(2023年撤退)と新聞印刷機も2024年に撤退する方針を発表しました。2025年には三菱ロジネクストというフォークリフト事業の売却を決めましたが、それぐらいですね。そういう意味では、多数の事業を長く続けることが価値だというのが、この会社のカルチャーですね。



