40年に一度のインフラの大転換期
【阿部】ところが、ガスタービンというのは、数千億円規模の研究投資が必要な「超資本集約型」の部門なんですね。だから2000年代以降、太陽光や風力など再生可能エネルギーが注目を浴びると、火力を使うガスタービンは“古い技術”とみなされて、欧米の企業などでは、だいたいリストラしてしまったんです。だから、今、新たにつくろうと思っても、つくれるところがほとんどない。三菱重工はその需要に応えられる世界的に見ても数少ない企業なんです。
【藤吉】ガスタービン不遇の時代も維持し続けたのが、今になって効いている。
【阿部】それはインフラをつくる企業の特徴でもあります。公共に資する仕事だから、ずっと鳴かず飛ばずの事業だったとしても、ずっともってなきゃいけない。インフラが出来上がってしまうと、次の転換期まで需要はないんです。
【藤吉】その転換期がようやくめぐってきたわけですね。
【阿部】それも30年から40年に一度のインフラの大転換期ですよ。だから、この三菱重工の事例は、新たなインフラをつくることで新しいインフラ企業が稼働し始めた象徴的な出来事として見るべきだというのが、僕の結論なんです。
しかもエネルギーという極めて根幹を成すインフラで、この大転換の影響は世界に及ぶ。そして世界中探しても、三菱重工を代替する企業は基本的にない。モノポリーなんです。だから三菱重工の株価上昇は防衛需要によるものだけでなく、インフラ企業としての本質的価値の再評価がなされた、と僕は見ています。
世界三強の中でも三菱重工に分がある
【阿部】今日はウチで三菱重工を担当しているアナリストの宮崎君にも来てもらっているので、もしもっと詳しいことが聞きたければ、どうぞ。
【藤吉】ではちょっと個別のお話を伺わせてください。今、世界でガスタービンを作っている企業は、重工以外にどこがあるんでしょうか?
【宮崎】三菱重工、アメリカのGEベルノバ、ドイツのシーメンスが、ガスタービンの三強ですね。GEベルノバはGEが発電部門を分社化した会社です。この3社でほぼ世界の大きいGTCC(ガスタービン発電システム)を手掛けてます。
【藤吉】品質面ではやはり重工に分がある?
【宮崎】そうですね。燃焼効率と耐久性の面で、重工にやや分があるようです。やはり数十年規模で安定稼働することが大事なので。今、アメリカ、日本、あとはアジアで需要が、何十台という受注が積み上がっているという状態です。
これが三菱重工の売上高と利益の推移を示したチャートです(図表1)。この「エナジー」というのがガスタービンを中心とした発電システムですが、グローバルにじわじわと伸びているのがわかります。それに加えて直近では、防衛・航空・宇宙、特に防衛がけん引しています。

