“感動エピ=脚色”と考えるのが自然
実に感動的な場面だが、『陰徳太平記』は、江戸時代に吉川広家の命で吉川老臣の二宮俊実と森脇春方が記した覚書をまとめた『安西軍策』を典拠として、岩国藩家老・香川正矩が著した『陰徳記』を、正矩の次男・宣阿が再編したもので、1717年に出版されている。正直なところ、正確なエピソードとは言い難い。
別の史料も見てみよう。文禄年間に成立したとされる『義残後覚』は実在の大名や武将が登場する武辺話を中心に、怪談・奇談・笑話・風俗記録など多岐にわたる逸話集(土井大介「山中鹿介異聞 : 『義残後覚』に見る「戦国咄」のありかた」『藝文研究』第95巻、慶應義塾大学藝文学会)だが「毛利家軍勢上月城を囲む事」という節がある。
ここでは、この感動エピソードは完全に除外され、こんな風に書かれている。
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