新技術が「新食感」を生み出した

しかし、この技術がもつ本当の価値は、時短ではなかった。乾燥のスピードを劇的に上げると、出来上がる麺の食感そのものが変わったのである。

「麺の食感が変わるんですよ。油で揚げた麺やノンフライ麺とも違う、まったく新しい食感の麺が生まれるんです」と櫻澤社長。麺の歯切れ、コシ、のどごし――熱風の温度と風速を細かく調整することで、これまでの即席麺にはなかった食感に仕上がったという。

これは、即席麺メーカーにとっては大きなニュースだった。日本の即席麺市場は、すでに各社が無数の商品を投入する超激戦区である。袋麺かカップ麺か、しょうゆかみそか、太麺か細麺か――どこかで他社と差別化しなければ、新商品は埋もれてしまう。そこに、これまで存在しなかった食感のバリエーションを生む技術が登場した。

冨士製作所の工場内。ここで作られた製品が世界各国の食品工場で活躍している
撮影=プレジデントオンライン編集部
冨士製作所の工場内。ここで作られた製品が世界各国の食品工場で活躍している

「我々がそれまでにない食感の麺を作れるという技術があれば、メーカーさんはそれを使った新商品を開発しやすくなる。実際にそういう新製品開発の話につながったケースもある」と社長は語る。

具体的にどの即席麺メーカーのどの商品にこの技術が活かされているのかは、契約上の事情で公にできないという。しかし、普段食べているノンフライ即席麺には、冨士製作所の技術が隠されているかもしれない。

開封したチキンラーメンの麺
開封したチキンラーメンの麺。撮影=2022年(写真=Ocdp/CC-Zero/Wikimedia Commons

「タテ型製麺機」で注目を集める

この高速乾燥機を開発する前年の1998年には、「タテ型製麺機」で「日食優秀食品機械資材賞」を受賞している。このタテ型製麺機がすごい技術で、水平に流していくのが普通だった製麺ラインを、縦に流すことを可能にしてしまった。これはいままでの製麺機ではあり得ないことだった。

縦にすることで何が良いかといえば、なんといっても省スペース化である。機械が横に広がれば、それを納める部屋も大きくなければならない。しかし縦型なら、高さは必要でも広さは必要ない。そうなると、確保に高額の費用が必要になるスペースを節約できる。一定の敷地に多くの住戸を入れるために、高層化するのと同じ理屈である。

このタテ型製麺機を中心に、バスケット式多段蒸器、多段フライヤーなどで構成される省力・省スペース型の即席麺ラインを、冨士製作所は1996年の国際食品工業展(FOOMA)に出展している。展覧会は展示品を見学する場ではなく、新しい情報を仕入れて商談に結びつける場でもある。

タテ型製麺機は、こうした展覧会をきっかけに多くの即席麺メーカーに注目されている。