物事、たとえ1人になっても、諦めてはいけない。もう1度、みんなで力を合わせるようにすれば、道は開ける。「戮力一心」の原体験。会社員人生の原点になった、と思う。

2012年8月、野村ホールディングスの代表執行役・グループCEOに就任。インサイダー事件が起きてトップが降板し、急きょ登板だ。4カ月前になっていた野村証券の代表執行役社長との兼務で、期間を限った収益の追求に加えて、企業文化の再構築や人材育成など長い時間軸を伴う課題も背負う。内定の記者会見で、思わず出た言葉がある。

「根底から会社をつくりかえたい」

後になって「そんなことを言ったのか」と思うほど、無意識だった。ただ、この10年にたまった「みんな、自分の頭で考え、自分で判断するということを、いつの間にかしなくなっているな」との思いが、口を開かせたのだろう。自分で考え、自分で判断したことは、責任は全部、自分にくる。それを、みんなが避けてきた。上に命令されたこと、みんなで合意したことをやっていれば、失敗しても責任は問われない。合議制、リスクヘッジ、判断の先送り――世の中にそういう傾向が広がっているとしても、そんな企業文化にはしたくない。それは、日本にとっても、野村にとっても、弱点だ。

もう1つ、会社全体が、お客からちょっと遠くなっている感じもしていた。どの部門でも、いま、お客がどう思っているのか、どう感じているのかに、鈍感になっていた。やはり、組織が大きくなって、官僚主義的になっていたのだろう。

幹部たちが、社長室へきて了解を得たがる癖は、まだまだ抜けない。「戮力一心」の改革を、加速する。

(聞き手=街風隆雄 撮影=門間新弥)
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