差別ではなく、風刺のつもりだった
話題を戻しましょう。ご説明したような移民の増加により、バングラデシュ人などのベンガル系の人々が作るベンガル料理におけるスパイスの大量の使用やそれにともなう香りは、住民からの苦情を引き起こしています。
しかし、この「外国食の臭いを禁止」した条例は、彼らを差別するようなものではなく、移民・多文化共生への反発を装いつつ、実は「迷惑臭気」規制の拡大を風刺した挑発的なものだったのです。その背景には地元の観光地化や移民増加による生活臭気の変化があり、伝統的なイタリア料理vs外国食の対立をユーモアで浮き彫りにしたのです。
このようにイタリア人は皮肉たっぷりのユーモアが大好きで、過激なお笑いで世間の注目を集めます。私は仕事で4年間ローマに住んでいましたが、ふだんの会話でもボケとツッコミがコミュニケーションにおいてとても重要でした。
発令した市長は、この条例は単に差別を推進しようとしたのではなく、「排他的政策の不条理」を強調するための手段であり、逆説的な意味合いがあると説明しています。つまり市長は差別主義者ではないのですが、「排他的な法律やルールはこのようにバカげていて現実的じゃないんだよ」という意味合いにて発令したのです。
それだけイタリアの日常生活には外国の食や移民が浸透していて生活の一部になっているということですね。
国境を飛び越えたニュースに
しかし、本来の意図とは別に、この条例は「やり過ぎ」「差別的だ」「いや実行は無理なのでただの皮肉だ」などと議論を呼び、類似規制の是非が全国的に話題になります。そしてイタリアでは住民間で移民問題や文化摩擦の議論が湧いているのは事実で、この条例は欧州の多文化政策批判としてSNSでも拡散。ナポリ近郊の街の移民との摩擦を全世界に知らしめる事件ともなりました。
イタリアも日本同様、このように移民問題に頭を悩ませており、またそのいっぽうでユーモアも含んだ議論が存在しているのです。
日本も移民問題が話題ですが、オープンな空間でユーモアも交えて活発な議論をするのも良いのではないでしょうか。


