小4の子どもが英語を「使いこなせる」ワケ

「単に答えを出すだけではなく、なぜそう考えたのかを言語化させるんです。これが批判的思考(critical thinking)の訓練になります」

書影
ショーン川上『英語力の核心』(アルク)

校長先生がそう説明してくれました。

「シンガポールでは、英語は道具です。英語を使って、数学を学び、科学を学び、歴史を学ぶ。だから、子どもたちは英語を『勉強』するのではなく、『使いこなす』ことを自然に身につけていくんです」

理科の授業では、実験結果を英語でまとめ、クラスメートの前でプレゼンテーションをしていました。小学4年生です。

社長のお子さんは、最初は英語がほとんど話せませんでした。でも、6カ月後に会ったとき、流暢とはいえないまでも、英語で自分の考えを説明できるようになっていました。

「最初は大変だったみたいですけど、今は楽しそうです。週末も学校に行きたいと言って困っています。英語で友だちと話すことが、もう普通になってるみたいで」

社長はそう話してくれました。実際、EF英語能力指数2024版でシンガポールは世界3位。アジアではトップです。でも、それは単に「英語教育がうまい」からではありません。中国系、マレー系、インド系といった多民族からなるこの国での共通語としての「英語で思考する」教育の結果でもあると思います。

日本の英語教育に決定的に欠ける「3要素」

これらの事例には、明確な共通点があります。日本の英語教育に欠けているのは、まさにこの3つなのです。

1 明確な市場目的
サムスンは「グローバル市場での主導権」、K-popは「世界市場でのファン獲得」、シンガポールは「多民族国家での統合」――具体的で明確な目的がある
2 イマージョン環境
サムスンの「English Only」、K-popの「毎日2時間の語学訓練」、シンガポールの「英語で思考する教育」――「逃げ場のない環境」をつくっている
3 思考と言語の一体化
単なる「翻訳」ではなく、英語で考え、英語で表現し、英語で議論――言語を思考のツールとして使いこなしている

日本人の英語習得における最大の構造的ハードルは、皮肉にもこの発展した経済と人口。「英語がなくても生きられる」経済環境そのものです。この環境下では、どれだけ教材を買っても、どれだけ塾に通っても、「切実な必要性」が生まれにくい。そして、切実な必要性がなければ、学習は「義務」や「努力目標」にとどまり、真の習得には至らないのです。

この構造を理解することが、第一歩です。

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