韓国の学生が語った「切迫感」

ソウルで開催された国際ビジネスシンポジウムに招かれたときのことです。懇親会で隣に座ったのは、延世大学経営学部に通う22歳の女子学生、ジヨン(仮名)さん。彼女の英語は完璧ではありませんでしたが、積極的に話しかけてきました。

韓国ソウルの南大門門の交通渋滞
写真=iStock.com/tawatchaiprakobkit
※写真はイメージです

Can I practice my English with you? I need to improve it before graduation.

(英語の練習をさせてもらえますか? 卒業までに上達しないといけないんです)

彼女は、日本のトヨタかホンダに就職したいといいます。でも、日本語はまだ勉強中。だから、まず英語で面接を受けられるレベルになりたいと。

そして韓国では、良い会社に就職するには英語が絶対に必要で、TOEIC 800点は最低ライン。それに加えて、実際に英語でプレゼンテーションやディスカッションができるレベルが求められると言います。(※1)

If I don't speak English, I can't get a good job. It's that simple. My parents spent so much money on my English education because they know I'll need it to survive,

(英語が話せなければ、良い仕事に就けない。それだけのことです。両親は私の英語教育に大金を使いました。なぜなら、それが私が生き残るために必要だと知っているからです)

「あったらいい」ではなく「必須」

彼女の言葉には、日本人学生にはあまり見られない切迫感(a sense of urgency)がありました。

※1:ジヨンさん(仮名)の当時の実感を示す発言であり、韓国の採用市場全体で「TOEIC800点が一律の最低ライン」であることを意味しません。スコア要件は企業・職種・採用年度で大きく変動します。

ここに、英語は「必須(essential)」なのか、それとも「あったらいい(optional)」ものか、という構造的な違いがあります。すなわち、英語が話せることに対する「切迫感」の違いです。日本は世界有数の経済大国であり、国内市場だけでも1億2000万人の消費者がいます。多くの企業にとって、国内市場だけで十分なビジネスが成立します。個人にとっても、「英語が話せなくても、日常生活や仕事で大きな支障がない」環境が成立しているのです。

対照的に、韓国の人口は約5200万人、台湾は約2400万人、シンガポールは約600万人です。国内市場が比較的小さいため、事業損益を担保するため、そして経済成長するためにも国際市場への進出、すなわち外貨獲得が不可欠です。企業も個人も、グローバルコミュニケーションの共通言語である英語の習得に、生き残りをかけた必要性を感じているのです。