事例2:市場獲得のための言語[K-pop業界]

数多くのアーティストを育成・輩出する韓国随一の大手芸能事務所を訪ね、練習生のマネジメントを担当している方にお話を伺ったときのことです。彼は、スマートフォンで練習生の週間スケジュール表を見せてくれました。朝9時から夜11時まで、びっしりと予定が詰まっています。ボーカルトレーニング、ダンスレッスン、演技レッスン、そして、毎日必ず2時間の語学レッスンが入っています。

コンサートホールの観客撮影
写真=iStock.com/SERENA HUS
※写真はイメージです

「英語、日本語、中国語。これは絶対にサボれないんです。なぜなら、デビューできるかどうかの評価基準に、語学力が含まれているからです。でも、それが当たり前なんです。TWICEを見てください。日本人メンバーだけでなく韓国人メンバーも、全員が日本語でインタビューを受けられますよね。あれ、練習生時代から徹底的にたたき込まれてるんです」

彼は続けます。

「私たちにとって、語学は『あったらいいスキル』じゃなくて、『市場獲得のための必須武器』なんです。日本市場は大きいから重要。アメリカ市場も狙う。中国も東南アジアも。それぞれの市場で、現地の言葉でファンとコミュニケーションできることが、成功の鍵なんです」

特に最後のコメントは、音楽、エンターテインメントに限らない的を射たものでした。

「日本も変わろうとしてるのはよく分かります。縮小しているとはいえ、まだまだ国内市場が大きいから、どうしても『国内で成功すればいい』という発想になっているのでは? K-popは最初から世界市場を見据えている。その差は大きいですよ」

事例3:思考と言語の統合[シンガポール初等教育]

コンサルティングは当然ながら企業に対して行うものですが、お付き合いが長くなると、社長をはじめ経営陣個人のご相談に乗ることが多くなります。本来は別料金としたいところですが、なかなかそうもいきません(笑)。

さて、あるクライアント企業の社長がシンガポールに移住することになりました。お子さまの将来の教育を考えての決断だったそうです。しかしながら、ご本人も奥さまもあまり英語が得意ではなかったため、筆者は、お二人のお子さんの学校選び、さらには英語の勉強をお手伝いすることになりました。

社長は「できれば公立校で、シンガポールの教育を体験させたい」と希望されました。筆者も個人的に興味があり、インターナショナルスクールや私立も含めていくつかの小学校を訪問しました。そんな中で、圧倒的に印象に残ったのが、授業の進め方です。

算数の授業を見学させてもらいました。先生が英語で説明し、子どもたちも英語で質問し、英語でディスカッションしています。彼らにとって英語は「外国語」ではなく、「学ぶための言語」なのです。驚いたのは、小学3年生の児童が算数の問題を解いた後、Why did you choose this method?(なぜこの方法を選んだの?)と先生に聞かれ、英語で自分の思考プロセスを説明していたことです。