韓国企業は日本の「2倍の予算」を投じる

大手電機メーカーの韓国オフィスで働く日本人駐在員から、こんな話を聞きました。

「韓国企業の英語研修予算、日本企業の1.5倍から2倍ですよ。うちの会社(日本企業)が年間2億円なら、韓国の同業他社は4億円使ってる。サムスンなんて、人力開発院全体の教育予算が年間60億円、のべ4万人が学習するって聞きました」
「なぜそこまで?」
「彼らにとって、英語力は『あったらいいスキル』じゃなくて、『企業の生存戦略』なんです。グローバル市場で勝てなければ、会社がつぶれる。だから本気なんです」

日本では、グローバル化の必要性は認識されつつも、この「切実さ」の欠如が、学習モチベーション維持を難しくし、一定レベルに達した後の「伸び悩み」を生む大きな要因となっているのです。

それでは、同じアジアの国々は、どのようにして英語力を高めてきたのでしょう? 筆者がこれまでさまざまな国際プロジェクトで見てきた中から、3つの事例をご紹介します。これらに共通するのは、明確な市場目的、イマージョン環境、そして思考と言語の一体化という3つの要素です。

事例1:企業戦略としての英語[サムスン人材開発院]

2008年頃、韓国のビジネスパートナーに招かれて、サムスンの人材開発施設を見学する機会がありました。ソウル近郊の龍仁ヨンインエリアにある、まるで大学キャンパスのような広大な敷地を持つ宿泊型の研修拠点でした。

サムスン電子の本社
写真=iStock.com/JHVEPhoto
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当時のサムスンといえば、象徴的存在だった李健熙イゴンヒ会長の時代に、サムスン電子が尹鍾龍ユンジョンヨンから李潤雨イユンウへとCEOを引き継ぎながらも、大胆な攻めのリズムを崩さなかった時代です。

日本が高品質・高機能の「国内優等生モデル」からなかなか抜け出せない間に、サムスンは最初から「世界で勝つ」前提で、半導体のキャッシュ、量産能力、サプライチェーン、商品投入の速度を一体に捉え、危機局面すら「差を広げる時間」に変えていました。強さの正体は、個別製品のヒットではなく、世界市場のルールを自社に有利な形へ押し上げる圧倒的な実行力でした。