無意識に眠ってしまう「マイクロスリープ」

睡眠負債がたまることの弊害は多岐にわたります。第一に、昼間のパフォーマンスが上がりません。経済産業省が発表した『企業の「健康経営」ガイドブック』によると、睡眠休養不足による経済的損失は1人当たり年間平均で32万8644円になるとされ、これは飲酒や運動不足による損失よりも高い金額となりました(※2)

また、肥満や糖尿病、生活習慣病など、さまざまな病気のリスクを高めることも報告されています。

さらに、睡眠負債が積み重なると、日中にもかかわらず数秒~10秒程度のごく短い時間、無意識に眠ってしまう「マイクロスリープ」という症状が現れることもあります。例えば、運転中にこのマイクロスリープが起きた場合には、自分や他人の命にかかわる危険にさらされることになります。

そんな恐ろしい睡眠負債ですが、日本は世界でも最悪の睡眠負債大国といわれています。2021年のOECD(経済協力開発機構)の調査によると、調査対象にした33カ国のうち一日の平均睡眠時間で、日本は最も短い7時間22分でした(※3)。これはなんと、全33カ国の平均より1時間6分も短く、その大部分が睡眠負債として蓄積されているものと考えられています。ちなみに、労働時間が長いことで知られる韓国でも7時間51分と日本より29分睡眠時間が多いのが現状です。

さらに、企業で就業している20代~60代に対象を絞ると、平均睡眠時間が6時間27分とする調査もあり(※4)、いかに日本の働き世代の睡眠が足りていないかがわかります。

〈今日から試そう〉

・睡眠は貯金できないと知ったうえで、生活リズムを見直す
・休日の寝だめで睡眠負債を返済するのではなく、平日から負債をためないようにする

「8時間」寝なくてもいい

× 毎日8時間は寝なきゃいけない

◯ 自分にとって最適な睡眠時間を知ろう

「理想の睡眠時間は8時間」といわれますが、最適な睡眠時間には個人差があります。そんななか、6時間未満の睡眠時間は全死亡リスクを約12%増加させるという恐ろしい調査も存在します。

一方、いつも長く寝ている人も、健康上になんらかの問題を抱えているために長時間睡眠になっているおそれがあります。特に長時間寝ても疲れがとれない人は睡眠時無呼吸症候群の可能性があるため、睡眠外来などに相談するのが望ましいでしょう。

「8時間睡眠説」のほか、「睡眠は90分周期なので90の倍数の時間で起きるとよい」という「睡眠90分周期説」も真しやかに語られています。これは、浅い眠りの「レム睡眠」と深い眠りの「ノンレム睡眠」がくり返される睡眠周期の1サイクルが平均約90分であることから広まった説のようです。しかし、睡眠周期には個人差があり、スイスで369人を対象に行われた調査によると、1サイクルの中央値は96分だったものの、60~150分まで幅広く分布していることが判明。さらに、同じ人であっても日によってサイクルの長さは異なり、一晩のなかでも1サイクルの長さは変わるため、90分という時間はあまりあてにならないのです。