立ち返った「ハンコを作る意味」
「手塚ずかん」で注目された岡田商会は続々とライセンス商品を手がけるようになった。とりわけ全国に知られるきっかけとなったのが2019年にリリースされた、ポケットモンスターのオリジナル印鑑「Pokémon PON」。最初期から数えて1000匹以上いるポケットモンスターのうち650ほどをオーダーできる途方もないシリーズだ。
既製品の雑貨だと、製造するにはある程度のロット数を必要とする。そのため、経済効率性を考えて売れ行きが予想できる人気キャラクターに集中してしまう。ところが印鑑ならばオーダーメイドが可能。たった一つから商品化できるのだ。思い入れがある、自分だけのポケモン印鑑を手に入れられるのである。そしてこのPokémon PONも人気商品となり、2019年は3億5000万円という過去最大の売り上げを記録する。
「印鑑は一人ひとりのために彫るもの。“ハンコを作る意味”に立ち返った案件でした。世界で1つしかないものが生み出せる、そこに価値提供できる印鑑メーカーという仕事に改めて誇りが持てたんです」
翌2020年、当時行政改革担当大臣だった河野太郎氏は行政手続きのオンライン化・簡素化を目指し、認印の廃止、いわゆる“脱ハンコ”を主導した。これによって印鑑業界は大打撃を食らった。岡田商会も例外ではなかったが、推し進めていたキャラクター印鑑のおかげで最悪の状況を免れられた。
「ハンコ」の役割を変えていく
「脱ハンコの大号令を経験し、印鑑=認印という感覚のままだと未来はないと感じました。キャラクター印鑑をはじめ、もっと暮らしに溶け込むものにしないと。現在は木や布、陶器、金属やガラス、人の肌などにも捺せるスタンプインクを共同開発しているところです。たとえばカフェのカップに店名のロゴやマスコットが入った消えないスタンプを捺せば、それだけで店のオリジナルになる。ギフト需要も生まれ、海外でもニーズがあるのではと考えています」
海外は日本と違い、捺印によって認証する文化は少ない。しかし、岡山さんがリサーチしたところ、日本独自の「ハンコ」が土産物として高い人気を博していることがわかった。海外ではグリーティングカードやプレゼントタグにスタンプを捺すといったギフト文化が発達しており、コミュニケーションツールとして活躍する場が多いのだ。
オーダーメイドを可能とする岡田商会の強みを活かし、2024年から北米へ向けてECショップ「FANCO」をスタートさせた。売り上げは現在までに300万円。

