大ヒットは、どうすれば生み出せるのか。関連動画の世界累計再生数が1億回を超えた僧侶の薬師寺寛邦さんは「流行に寄せて作っても、聴く人には絶対に届かない。本当に必要なのは、作り手の純粋な好奇心だ」という――。
寺を継ぐことに反発を覚えていた
愛媛県今治市にある禅寺「海禅寺」で、住職の父の元、副住職を務める薬師寺寛邦さん。「寺の息子」として生まれたものの、20代前半は寺を継ぐことに反発を覚えていたという。音楽活動にのめり込み、2007年にメジャーデビューを果たす。
「でも、そこで行き詰まってしまったんです」と、薬師寺さんが当時を振り返る。
「仏教から、住職を継ぐことから逃げるための手段としての音楽だったので、周りからCDを売るために色々なことを言われた時に窮屈になって、自分が何を伝えたいのか、そもそも何をしたいのかがわからなくなってしまいました」
そんな時、偶然立ち寄った書店で「禅の本」を見つけ、吸い寄せられるように手に取った。
「それを読みながら、幼い頃から意味もわからず音読していた経典『般若心経』がどういうものだったかを初めて考えるようになったんです。自分の内側にもともとあった仏教、禅を通して自分自身と向き合えば、本当に歌いたい、伝えたいメッセージを表せるのではないかと思いました」
イチからやり直そうと2011年、30歳にして京都市の天龍寺へ修行に入った。そこで大きな“気づき”を得る。
「修行時代、毎朝4時半に起きて約20人でお経を唱えるのですが、その時間が心が落ち着くというか、整っていく感じがあって、これを音楽にしたいと思ったのです」

