通されたのはトコジラミだらけの部屋
物件が実在していたとしても、そこには悪夢が待っていることがある。
昨年8月、出張でロンドンを訪れたフリーランスのMFさんは、深夜、ブッキング・ドットコムで予約したホステルの部屋に足を踏み入れた。そこで目に飛び込んできたのは、マットレスの上を這い回るトコジラミ。枕にも、壁にもいたという。
スタッフに被害を訴えると、別棟の部屋へ案内された。だが、移された先にもトコジラミがそこここに這っている。MFさんはフロントで夜を明かし、夜明けの列車を待って帰宅を余儀なくされた。
この一件を報じた英日刊紙のガーディアンによれば、交通費や衣類の買い替えなど損失は計265ポンド(約5万6800円。5月26日現在のレート、1ポンド214.39円で換算、以下同)。出張が潰れ、フリーランスとしての収入も失われた。
立地するケンジントン・アンド・チェルシー区はホステルに対し、害虫の駆除を命じた。ホステル側はMFさんに250ポンド(約5万3600円)の補償を申し出たが、未払いのままだ。
肝心のブッキング・ドットコムは、MFさんの苦情に返答すらしなかった。その間も、トコジラミが確認された同じホステルの部屋に、他の客が泊まり続けていたことになる。
ガーディアンが同社に問い合わせると、事態は一変した。ブッキング・ドットコムは即座にMFさんへ返金し、ホステルの掲載を停止した。客の訴えには取り合わなかったが、メディアが動いたことで対応を変えた形だ。
このホステルではトコジラミの被害報告が、2022年からすでにレビューサイトに上がっていたという。イギリス国内の系列施設全6カ所のうち3カ所でも、同様の苦情が確認されている。
「ホームレスの宿泊所」をホテルとして登録
アメリカでは、妊婦が被害に遭った。
2022年9月のある土曜の夜。妊娠5カ月のアンナさんは友人の結婚式を終え、翌朝の早朝便に備えてニューヨーク・ロングアイランドシティのホテルへ向かった。
ところが、予約したはずの「ホテル」の実態は、ホームレスシェルター(支援団体などが運営するホームレス向け宿泊所)だったという。ニューヨーク・タイムズが報じている。
アンナさんはウーバーで空港へと一時避難し、ブッキング・ドットコムに電話した。対応した担当者は、「ホテルにメールを送り30分待つ」と告げた。妊娠中の身で深夜に行き場を失ったアンナさんだが、それ以上の対応を受けることはなかった。
代わりの宿すら手配されなかったという。折しも全米オープンテニスの開催期間中で、周辺はどこも満室だった。空港のロビーで一夜を明かせればまだ良かったが、向かったニューヨークのラガーディア空港は夜間に閉鎖される。作業員から借りた車椅子に身を預け、アンナさんは午前4時に空港の門が開くのをただ待ったという。
被害者はアンナさんだけではなかった。同ホテルのブッキング・ドットコムページにはすでに英語・スペイン語・フランス語で計6件の苦情レビューが残されており、アンナさんを含めて少なくとも7人が同じ目に遭ったとみられる。

