「終身雇用はもうすべてではない」
アサヒに限らず、サントリーは2014年に米ウイスキー大手を買収。最近も第一三共から一般医薬品子会社の買収を決めた。キリンHDは23年に豪州の健康食品メーカーを買収するなど、ヘルスサイエンス事業強化を進めている。脱国内市場、脱酒類飲料の動きが、各社とも加速している。
――近藤さんが大学生だったバブル時代の1989年。世界の時価総額ランキングで日本企業は1位から5位までを独占し、ベストテンには7社が入っていました。ところが、2025年における日本企業の最高位はトヨタの49位です。GDP(国内総生産)でも今年はインドに抜かれて5位に後退しそうです。こんな状況ですが、特に若い社員は何をどうしたらよいのでしょうか?
【近藤】Willをもつことです。どんなに厳しい時代にあっても。自分が何をしたいのか、そのためにはどうするべきなのかを、Willに基づいて決めていく。挑戦していくのです。失敗を恐れずに。各自が自立していく。
終身雇用はもうすべてではない。自身の考えに沿った転職は、普通にありだと思います。仕事がつまらないと、人生はつまらなくなる。
社員の一人ひとりが、意欲を持って働ける会社の環境を作るのは、経営のミッションだと私は考えます。
社長として、母として
アカデミー賞を受賞した黒人俳優は、シドニー・ポアチエとデンゼル・ワシントン。「二人に共通するのは、白人好みの黒人という点」(大手紙文化部の映画担当)と言う。
男社会だった日本企業の女性幹部はみな「男性好みの女性」なのかと言えば、そんなことはない。
近藤氏について「実行力、推進力がすごい」「話しやすい上司」と元部下は話す。アサヒの本流である営業出身であり、「いろいろな仕事を経験してきました」と近藤氏。
取材中も、「(受験が終わり大学生になったら)娘は遊んでばかりで」などと経営者ではない、どこにでもいる母親の顔で笑った。
その瞬間、最前線で働きながら子育てを両立させてきたという事実が醸す、なんとも懐の深い人柄が滲み出ていた。


