社長就任には即答しなかった
――社長就任は、いつ、誰から、どんな形で告げられたのですか?
【近藤】昨年の12月でした。(中間持ち株会社の)アサヒグループジャパンの濱田(賢司)さんから、「今度、社長をやってもらうよ」、と。
――で、どう応えましたか。
【近藤】その頃は、SCM本部長としてサイバー攻撃によるシステム障害への対応で手一杯だったので、耳に入らなかったのが本当のところです。
そこで、生意気な私が出ちゃいました。
――どんな、ですか。
【近藤】濱田さんに対して、「ちょっと待ってください。今は考えられないです……。ただ、トップに就けるよりも、私を泳がせておくというのか、もっと遊ばせておいた方が、活躍できて成果を上げられます。会社に貢献できると思いますよ」、と話したんです。
――それで、濱田さんはなんと?
【近藤】「こんな奴は初めてだ」って、呆れてました。現実には、自分のことよりも会社を何とかしなければという思いの方が、断然強かった。
――即答はしなかったのですね。
【近藤】はい、年末年始の休暇に入り、どうしたものかと、自分の内側で“壁打ち”をしました。上司になってからの私は、部下たちに「前向きに挑戦しなさい」と言い続けている。その私が、挑戦しないのはよくない。こう判断して、年明けに(社長就任を)受けました。
AIよりも大切なのは「生の情報」
――ご家族からの反応は?
【近藤】主人は「健康にだけは気をつけて」と言ってくれました。生産工学を専攻する大学1年生だった娘は「ママ、大変だね。男の人たちから、いろいろ言われちゃうよ」と話してました。学生の娘がどこまで現実を理解していたのか、分かりませんけど。まぁ、家族は応援してくれています。
――小路(明善アサヒGHD会長)さんからは、何か言われましたか?
【近藤】メールで「期待しています」「近藤さんしかいない」といただきました。経団連副会長でもある小路さんは、(経営危機に陥っている)日産自動車の経営会議議長に6月から就きます。社外取締役としてです。本当に大変な仕事にチャレンジするんだと、思います。
――アサヒグループはいつの時代も、挑戦する会社なのですね。会社としてだけでなく、個人としても。経営トップとしては何を大切にしていきますか?
【近藤】AIがどれほど進化しても、一番大切なのは生情報です。生きた情報は、お客様との接点である現場にある。現場力を大切にしたい。
それと、どんなに素敵なビジョンや戦略があっても、動かしていくのは「人と組織」。なので、人と組織の力を最大限生かせる環境作りを大切にしたいと考えます。私がいつも不機嫌にしていたら、誰も挑戦しないし、意見も出せません。

