サイバー攻撃で仕事はアナログに変わった

――アサヒGHDが、2025年9月にサイバー攻撃を受けたとき、近藤さんはアサヒ飲料常務執行役員SCM(サプライチェーンマネジメント)本部長でした。

【近藤】9月29日にシステム障害が発生し、2日後には受注を開始し、4日後の10月3日からは出荷を開始しました。全部ではなく、一部のアイテムからでしたけど。SCM本部長としては、グループのアサヒビール、アサヒ飲料、アサヒグループ食品とが、物流で不公平にならないようにと、3社で協議して対抗策を講じていった。

システムを止めたため、最初は受注も出荷もいつになるのか、見当もかつかなかった。エクセルやファックス、社内のPCだけでやりとりするツールを使いました。営業から寄せられる受注データをエクセルに打ち込み、社内の物流会社にツールで送った。仕事のやり方をアナログだった昭和に戻したのです。

アサヒグループでは役員クラス、本部長クラスから各現場まで、発覚後すぐに各層が一斉に動き出した。すごい社員たちだと、感動を覚えました。

犯行グループに身代金は払わない

――中堅スーパーの飲料担当のバイヤーは、「三ツ矢サイダーは定番商品なので、棚から外せないが商品が入らない。緊急処置で、類似したスプライトを替わりに配架した」と話してました。

【近藤】小売りの皆さんにはご迷惑をかけ、厳しい言葉もいただきました。そんなとき、間に入り、物流面を支援してくれた特約店(問屋)もいました。感謝の限りです。自分たちの力だけではなく、取引先からの助けがあって正常化にたどり着いたのです。

取引先の協力なしにはサイバー攻撃からの回復はなかったと語る。26年下期以降は「完全回復」を見込む。
撮影=遠藤素子
取引先の協力なしにはサイバー攻撃からの回復はなかったと語る。26年下期以降は「完全回復」を見込む。

アサヒグループは、犯行グループが要求した身代金を払わないと決めていた。テロリストとは取引しないのと同じ理屈です。

サイバー攻撃を経験し、ハード面ではあらゆるアクセスを疑って検証する「ゼロトラスト」の考え方に基づき、システムのセキュリティを強化しています。一方でソフト面では、「不審なメールは開かない」といった社員のマインドのリセットを徹底させています。