認知症の進行は薬で遅くなるのか
また、認知症と診断されたら、認知症の治療薬を服用したほうがいいのかというのも、難しい問題です。日本では1999年に、認知症の進行を遅らせるための「ドネペジル(製品名『アリセプト』)」という薬がはじめて認可されました。
翌2000年に介護保険制度が始まり、その時期を境に、実際に全体的な傾向として高齢者の認知症の進行は遅くなっています。
ただ、それが薬による効果なのか、介護保険制度により、それまで家族介護で家のなかに閉じ込められがちだった認知症の高齢者が、デイサービスなどの利用で脳に刺激を受ける機会が増えたことによる効果なのかは、判断が分かれるところです。
アルツハイマー型認知症は、脳の神経細胞のなかまでアミロイドβというタンパク質が増えることで発症するとされています。
現在、認知症の治療で一般的に使われている薬は、アミロイドβが増えるのを防ぐものではなく、アセチルコリンという神経伝達物質を増やすことにより、脳内の神経の働きを活発にするものが中心です。
それらの薬は、認知症の進行を多少遅らせる効果はありますが、「多少」程度です。多少であっても効果があるなら飲むと判断してもいいし、その薬代を使って、月1回おいしいものを食べようという発想があってもいいのです。そこは個人の生き方、考え方しだいだと思います。
うつ病の薬もすべての人に効くわけではない
現在のところ、認知症の根本的な治療薬はありません。アミロイドβが脳内で増えるのを防ぐ新薬として注目された「レカネマブ」は厚生労働省に承認されましたが、本当に認知症の進行を抑える効果があるのかまでははっきりしていません。
認知症の根本的な治療薬ができるかどうかは難しいところです。アミロイドβが脳内で増えるのを防ぐことができるとして、それが有効なのは、もしかしたら認知症になるずっと前の段階なのかもしれないし、認知症が一種の老化現象である以上、アミロイドβの蓄積だけを止めても、発症や進行を防ぐことはできないかもしれないからです。まだそこがわかっていません。
また、うつ病の薬に関しては、「幸せホルモン」とも呼ばれる脳内の神経伝達物質、セロトニンの働きを増強する「SSRI」(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)という薬があります。
若者には効きにくいとか異常な興奮を引き起こすなどの問題が指摘されていますが、私の経験では、高齢者の場合は比較的効く人が多いようです。とはいえ、すべての人に効くわけではありません。
