「皮膚は露出した脳である」という事実

「皮膚なんて、身体を包む『パッケージ』に過ぎないだろう」

そう思うなら、今すぐ認識を改めてください。

発生学的に言えば、皮膚と脳は「外胚葉がいはいよう」という同じ細胞から生まれた双子の兄弟です。

皮膚は「露出した脳」そのもの。

チクチクする縫い目、ムレる化繊、ゴワゴワのシーツ――これらは、脳を24時間、細い針でつつき続けているのと同じです。

あなたが「なんとなく体が重い」と感じているその正体は、脳への慢性的な「ノイズ」なのです。

灰色のソックス
写真=iStock.com/locknloadlabrador
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47歳、京都の宿で「自分の浅ましさ」を知った夜

少し、個人的な話をさせてください。

47歳で出版社を辞め、独立した最初の一年は、地獄でした。仕事は思うように取れず、貯金が減る音に怯え、不眠症に陥っていた。

当時の私は、問題を外側にばかり探していました。企画が悪いのか、人脈が足りないのか。ToDoリストを増やし、自分を追い込み、身なりはどうでもよくなっていた。

ある夜、取材で泊まった京都の小さな旅館で、私は救われました。

布団に触れた瞬間、ひんやりとした、きめ細やかな「布」の感触に身体が反応した。エアコンを消し、その清潔なシーツに潜り込んだとき、何かが、すとんと、ほどけた。

「自分を、こんなにも粗末に扱っていたのか」

情けなくて、涙が出ました。脳が機嫌よくなるには、まず皮膚を機嫌よくさせなければならない。理屈ではなく身体で理解した瞬間でした。