ロシアは「原油危機」の救世主にはなれない
中東原油が足りなければロシア産で埋めればよい、という話でもない。4月15日に配信されたロイターの記事によれば、日本の製油所稼働率は4月11日までの週に67.8%にとどまり、戦争前の80%超を大きく下回った。
日本は原油輸入の約95%を中東に依存し、製油所も主に中東産の中質・高硫黄原油に合わせて設計されている。米国、マレーシア、アゼルバイジャン、ブラジル、ナイジェリア、アンゴラなどへの代替調達は進んでいるが、非中東原油だけで短期に完全代替するのは難しい。
4月23日に配信されたロイターの記事によれば、アジアの4月の原油輸入は前年比22%減の見通しで、2016年以来の低水準になる。ロシア産を洋上で買う動きがあっても、油種、設備、航路、保険、決済の制約は消えない。
世界が困るほどロシアが思い通りに売れる、という単純な構図ではないのだ。むしろ買い手は今回の危機を通じて、中東にもロシアにも過度に頼らない調達地図を描き直している。短期の駆け込み需要は、長期の顧客離れの始まりにもなり得る。
「ロシア有利」の状況は一瞬で崩れる
もう一つ重要なのは、原油高そのものが永続的ではないことだ。
4月24日に配信されたロイターの記事によれば、供給不安で原油価格は週間では大きく上昇した一方、米国とイランの和平協議再開の可能性が意識されると、相場は上げ幅を削った。ホルムズ海峡の通航はなお実質的に妨げられているが、外交観測だけでも市場は揺れる。
これはロシアにとって重要である。KSEの試算にある追加収入は、戦争が長引き、高値が続くほど増える。裏を返せば、停戦観測、海峡再開、制裁猶予撤回、港湾被害の深刻化のいずれかで計算は崩れる。13兆円は確定利益ではなく、危機が長期化しなければ消える期待値に近い。
投資家にとって価格は日々変わるが、供給国としての信用低下はすぐには戻らない。高値は市場の一時的な反応であり、信用は契約と記憶の蓄積である。ロシアが本当に勝者なら、この危機後に顧客が戻り、制裁も弱まり、同盟国からの信頼も増すはずだ。しかし現実には、その反対の材料が増えている。

