愛されたドールは梱包を解けばすぐわかる
依頼件数は年単位でみると10件強ほどだという。コンスタントに全国から新規の依頼が届いており、そのペースは2020年から安定している。春に依頼が集中するのも当初からだ。
「春って別れのシーズンでもあるので。転勤や引っ越しなどで環境が変わったりして、どうしてもドールを手放さないといけなくなって、ウチのたどりつくというのがひとつのパターンなのかなと思います」(新さん、以下同)
依頼者の年代は40~50代が中心。職場の配置換えが起きたり、老親の面倒をみるために生活スタイルを変えたりする必要に迫られることが多い年代だ。自分自身の健康や体力に不安を感じる時期でもあり、タイプによっては30kg以上する成人型ドールの取り扱いに不安を感じ始める人も少なくないという。
しかし、等身大サイズのドールを手放すのは簡単ではない。精液が残存していたら医療廃棄物になってしまうのでふだんから丁寧な清掃は欠かせないし、きちんと整えても通常の粗大ゴミとしては出せない。基本的には専門の引き取りサービスを頼ることになるが、そこに不安を感じる人が少なからずいる。
「雑に廃棄される不安もありますが、きれいにしたあとに転売されるとか、引き渡し先で使われてしまうといったことも実際にあります。検索すれば専門サービスが見つかりますが、信用できるか否かを見定めるのはやっぱり難しいですよね。ウチも実店舗で看板を出しているわけじゃないので、『本当に大丈夫か?』と不安になりながら連絡してくれていると思います」
依頼主の真剣さやドールを大切に思う気持ちは、届いたドールの梱包を解くとすぐに分かるという。
「いつも『段ボールの中に入るだけ入れていいですよ』と伝えているんですが、愛着が深い人はその子に着せていた服を一緒に詰めていたり、手にブーケを持たせたり。本当に宝物なんやなって伝わってきます」
当然、ドールの状態もきれいに保たれている。性的な道具という関係性をとうに超えているのもよくあることで、届くドールのうち7割は性交渉の痕跡が見られないという。
「ドールは大切に扱っていても、まずまつ毛や爪にほころびが出ます。指を含めた関節も壊れやすいですね。大切にしてきた人のドールはそのあたりが本当にきれいで、慣れないうちに関節を傷めてしまった場合もきちんと補修されていたりします」
ドール葬儀社に届くのは、そうした「愛されたドール」が多い。物理的な処理だけでなく、注いだ愛情にピリオドを打てるような何かを求める人ほど、その儀式性を求めるという表れなのかもしれない。過去には単独葬に立ち会っている最中に泣き崩れる人や、別れがあまりに惜しくなって式の後に再び引き取った人もいたという。



