手元資金が「生活費1年分」より少ない
たとえば、次のようなご家庭を考えてみましょう。
夫42歳・妻40歳(共働き)
子ども2人(中学1年・小学4年)
世帯年収:約1100万円(夫600万円・妻500万円)
月の手取り:約61万円、ボーナス手取り:年間約120万円
住宅ローン残高:約3200万円(金利0.8%変動・残り22年・月返済13万円)
手元現金:約500万円
[月の支出内訳]
住宅ローン:13万円
管理費・修繕積立金:2万円
食費:8万円
光熱費・通信費:3.5万円
保険料:3万円
教育費:6万円
車関連費:2.5万円
レジャー・日用品:5万円
新NISA積立:3万円
合計:約46万円/月の余剰:約15万円
世帯年収1100万円は「それなりに余裕がありそう」と見られやすい世帯です。毎月の支出を並べると合計約46万円で、月の余剰は約15万円。一見すると問題なさそうに見えます。
しかし、手元の現金は約500万円。約550万円という生活費1年分の目安まで、あと一歩届いていません。ボーナスが出るたびに「繰り上げ返済に回すべきか、投資額を増やすべきか、現金を残すべきか」と迷うのも無理はありません。
せっかくのボーナス、どちらに使う?
では、ボーナスから資金を拠出する2つのケースを比較してみましょう。
【ケースA】100万円を繰り上げ返済(元利均等返済・期間短縮型)した場合
返済期間は約9カ月短縮され、軽減される総利息は概算で約19万円です。年平均の利回りに換算すると、ローン金利とほぼ同じ約0.8〜0.9%程度になります。2026年4月時点の変動金利が0.6〜1.0%程度であることを考えると、低金利のローンほど繰り上げ返済による利息削減の効果は限定的といえます。
また、手元から100万円が一気になくなる点も見逃せません。生活費1年分まであと一歩という状況で100万円が減ると、まとまった出費への備えがさらに遠のいてしまいます。
【ケースB】新NISAの積立を月3万円から6万円に増額した場合
ボーナスから計36万円をNISAの増額分として充てる形にします。月6万円×22年間、年利5%で運用できたと仮定すると、積立総額は約1584万円、運用後の想定資産は約2800万円になります。運用成果は変動するものの、長期で考えれば、ケースAの約0.8〜0.9%を上回る可能性があります。
ただし、これはあくまで長期で順調に運用できた場合の試算です。相場が大きく下がる時期に教育費や修繕費が重なれば、資産を取り崩すタイミングを誤るリスクがあります。

