本当に備蓄している保証はない

そもそも「民間に備蓄させる」といっても、「一定量はいざという時に出荷できる量として認識しておいて下さい」というだけの話だ。いざという時に民間企業が本当にその量を持っている保証もない。今後民間企業からの反発も予想される。

本当に必要な量の備蓄は、国が責任を持って行うべきではないのか。

財務当局は今でも「農業予算はまだまだ多すぎる」と言っている。

ホルムズ海峡封鎖で肥料や燃料のコスト高が深刻化するのが目に見えているのに、農家を助ける政策をすすめる気配はない。

むしろ、農業の経営環境が悪化しても、それに耐えられる農家だけが残ればいいという発想だ。そして備蓄は減らし、米は作るなと言う。食料自給率を上げるために金をかけるのはもったいないから、もっと輸入すればいいという発想に立っている。

これは驚くべき危機認識の欠如である。ホルムズ海峡封鎖による食料危機が現実のものとなっているのに、もっと農家を減らし、備蓄を減らし、生産も減らす」と言っているわけだ。

国による「セルフ兵糧攻め」(「総合的な国力から安全保障を考える有識者会議」の初会合で発言する高市早苗首相、2026年4月27日)
写真=時事通信フォト
国による「セルフ兵糧攻め」(「総合的な国力から安全保障を考える有識者会議」の初会合で発言する高市早苗首相、2026年4月27日)

国による「セルフ兵糧攻め」

こんな政策を続ければ、政府の愚策により国民が飢える結果になりかねない。それでは「セルフ兵糧攻め」だ。

今必要なのは、農家にもっと作ってもらい、備蓄も増やし、国産を増やして輸入を減らす政策だ。米の生産量に余裕があれば、小麦やトウモロコシの輸入が止まった場合に需要を代替することもできる。

中国は約1.5年分を備蓄している。一方、日本の米備蓄100万トンは国内消費量の1.5カ月分に過ぎない。もし日本で1年分の米を備蓄するには、あと700万トンは備蓄しなければならないのだ。そのコストは「もったいない」のではなく、いざという時に命を守る安全保障・国防のコストだ。アメリカから在庫処分のような武器を大量に買うのに巨額を使うくらいなら、まずこうしたところにきちんとお金をかけるべきである。それこそが本当の国防だろう。